紋谷のソコヂカラ

ドイツ人の知るニッポン

投稿日時:2008/10/07(火) 18:19

先日、ドイツ人のカップルと知り合った。旅の途中だという。
成田から当日、仙台に向かい、秋田の温泉まで足を伸ばし、
金沢まで戻り、その後、京都に抜け、
また成田まで、このプランを2泊3日でこなすらしい。
 
聞けば、日本は初めて…なんともガッツある2人だ。
男性は、僕より年上、女性は同じくらいか…苗字が違う2人でした。
建築の仕事をしていて、友人に「日本は行くべきだ」と薦められ…
フランクフルト(ポーランドに近い方ではない)
近郊の小さい町からやって来たらしい。
 一応、旅行代理店に組んでもらったという工程表を拝見すると、
2泊の宿は、乳頭温泉と越後湯沢温泉とある。
 
しかし、秋田乳頭温泉から角館を経て、大宮経由で越後湯沢に入り…
翌日、金沢に抜けて、その日中に京都見学して
成田からドイツへというのはどう考えてもおかしい。
 日本人ならこうは組まない…というかこうは組めない。
 
「これは無謀ではないかドイツ人?」 というと、
 「日本人はもっとすごい、
   4日でフランス、ドイツ、オーストリア、と回るではないか?」
 と言われた。

 それでも、ガイドさんはいない。
 切符も自分たちで取りながらの旅と言うので、
 途中、なにか困ったら…と
 携帯の番号を教えようとしたが、持ってきてないという。
 ついでにカメラも不携帯。 
 
「旅の思い出は残さないのか、ドイツ人?」 と訊ねると…
「ここに…」と言いながら、黙って胸を指差した。

  負けてばかりは癪なので…
 「さすがドイツ人…あなた方の精神の強さは有名ですよ」
  というと
  2人揃って首を振り…
 「今のドイツに、昔の気高さはない。それは日本人…思い込みだ。
 私たちは、それで良いとは思わないが、しかたない。
 昔には、戻れないから…」
 
と言う。
フランクフルトは旧東ドイツ…
東西融合がもたらしたものと失ったもの…というわけらしい。
 
「短い時間だったけど、ありがとう。これはお礼」
と別れ際に、葉巻をくれた。
 
「日本で知っているのは、ニコンとトヨタ。
  あと、ヤマハとキリン。もちろんアニメ」

 
ドイツといえば…ゲーテ…ワーグナー…ソーセージ。
 メルセデス…シーメンス…アイスバイン。
 ドナウ川…レーニン…ゲルトミュラー。
 
  さて、……… 。
 
◆◆◆                             
 
アイーダトランペットという楽器があります。
これは、オペラ、「アイーダ」を上演するには欠かせない
長さ1m以上のトランペット。
このアイーダを、日本で上演することになり、
そのトランペットが必要となりました。
なんとカラヤンの依頼です。

舞台上の小道具でもあり、劇には欠かせない
代物ですから代替は利きません。
それではと、ヤマハが乗り出し、
このアイーダトランペットの製作に取り掛かりました。
 
原料となるブラス(まあ真鍮です)から、
成型をしてゆきました。
ブラスの不純物を出来る限りの技術で取り除く作業。
ところが、そでれ出来上がった原材料をベースに成型しても、
上質な音色が再現できません。
試行錯誤の結果、困り果てたヤマハのスタッフに、
ウィンフィルのトランペット奏者からこんな提案が、
 
「僕のトランペットを削るから…
それで成分を分析してみたら」と…
早速、スタッフが検査してみると…
中に1%の不純物が混ざっていることが分かったのです。
 
ヤマハのスタッフは、アイーダに相応しい音色を奏でるには、
とにかくブラスから「不純物」を取り除き、
ピュアなものにしようとやっきになっていたのですが、
そこに正解はなかったのです。
 
彼らが無用な邪魔者と決め付けていた…「1%の不純物」こそが、
アイーダの音色に隠された秘密でした。
 
 
ライカというカメラをご存知ですか。
 
世界に冠たる日本の光学機器メーカーの開発上の基本ポリシー…
言い換えれば、設計思想は…
「フレア(乱反射)が出ないように。色がにじまないように。
  直線がまっすぐ写るように。そして、コントラストがはっきり写るように。」
その結果、 メカニカルは急激な進化を遂げてきました。

 「手軽で 簡単 キレイ 」の究極の実現。
 
“収差”をなくすことが市場へのアプローチ。
キャノンのエンジニアの友人に改めて聞きました。
 
「つまないとは思わないのか?」
「うちは、最先端。そんなことは言ってられない」
「ニコンはキムタクで盛り返し、高級コンパクトデジカメを出すらしいじゃないか」
「うちはうち …事業は、カメラだけじゃないし…」

年代モノのライカは、昔から僕のあこがれです。
露出もシャッタースピードも合わせなくちゃならないし、
年代によってはフィルムの入れ替えも面倒臭い。
そもそも持つと…ずしりと重い。
 
手軽で簡単とはまったくの対極の代物ですが、 
ライカで撮影された写真には、
デジカメでは絶対に撮ることのできない世界があります。

「被写体を取り巻く“空気”」を根こそぎ持ってきてくれます。
補正された色ではなく…その場をまるごと…
時間ごと再現してくれます。
そしてこのチカラは、「面倒臭さ」の中にしかありません
…おそらく。

 
日本酒は好きですか?
 
酒造メーカー、菊姫の杜氏が言っていました。

「ほかのメーカーは、醸造アルコールをいかに入れないで、
  米を磨くことから…を競っている」
「うちは、あえて醸造アルコールを添加させることで、
  うま味を出している」と。

もう昔ですが、なにかの記事で読んだだけなので、
今はどうかは知りませんし、
言葉が正確か覚えてはいませんが、ニュアンスはこうでした。
そういえば、こんな台詞もありました。
 
「大吟醸は冷か、常温で…。
   誰が決めたんだい。本物の酒は、お燗しても何でもうまいんだよ」
 
ふたりはプリキュアマックスハート」なるアニメを観たことありますか?
 ※たぶんシリーズのタイトルで、そもそもはマックスハートなのか…なんかそんな感じ。
 
もう4年ほど前、娘がはまっているというので、
友人のお宅で拝見しました。
主人公は、女の子…学園友情モノかと思えば、
後半は、怪獣と戦うヒロイン戦士に早替り。
これを30分に押し込めたアニメです。
もう…これが、すべてが薄っぺらい。
 
聞けば、当時、ヤングチャイルドには大人気、
グッズの売り上げだけで
数十億の経済効果を生み出すコンテンツだそうです。

これはまずい。と真剣に思いました。
 
友情も栄光も…30分では絶対に手に入らない。
世の中、こんなんでうまくいくなんて、
子供心に植えつけられたら、将来が大変だ。

とはいえ、他人の家庭です。大きなお世話は過ぎたることと、
ヒロイン戦士の武器のおもちゃを振り回す娘さんを横目に…

「未来少年コナン」を全巻そろえてみませんか?  と告げるに留めました。
 













~ドイツ人の知っているニッポン~
 
あとは、自動車系のネタですが…
もう言わずもがなですので止めます(笑)

ただ、これも友人が
「今日ね。近所のバイクショッツプで…試乗しちゃったんだよね」
  と嬉しそうに…カタログを見せます。

ハーレーダビットソン
 
「それがさ…ワシ…ヤマハのV-MAXに乗ってるジャン。
でね、店員にね

“僕のバイクと、走り方とか、何か違うんですか?”って聞いたのさ。
  そうしたら、あのですね○○さん(友人の名前)…

“ハーレーは、アメリカ大陸を横断するために造られたバイクですから”

ってひとこと言うんだよ!それだけ…
それが答えですって感じで。
その後も、営業トークなんてまるでなし。
それがさ、まだ、若造の営業マンだよ…
俺さ…思わず見積もり取っちゃったんだよね(笑)」
 
 
◆◆◆
あのドイツ人。
もう、故郷に戻っていると思いますが、
3日の滞在で何を感じたのか、聞いてみたいものです。
文化、芸術の豊かな美意識と先端の産業を合わせ持つ国
…ドイツは、考えてみれば日本と似ている。
 
市場経済の果てに、“そのもの”の価値は残っているのか?
…ゲルマン人。


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