紋谷のソコヂカラ

「旅する力」に思うこと… [本]

投稿日時:2009/02/06(金) 03:10

僕は、映画はひとりで観るのが好きです。
その映画の全部と自分が、上映時間中、
相対している感じがするから…

でも、たまに、この映画はこんな奴と観たら楽しいだろうなあ…
とか思う時があって、そういう時には、一緒に行きたくなり、
誘ってみたりするのですが、大概が突然で、
向こうの都合が会わなかったりで、
結局はひとりで観る事になったりするのですが、
それでも、うまいこと都合を合せてくれたりで、
一緒に見た後の、話しはとても楽しい。
 
もともと、相手の趣味も分かっているから
当たり前なのですが、その後、酒を飲みながら、
ああだこうだ言い合えるというのは、幸せな時間です。
 
これが、なんとなくのデートとかで、映画をチョイスしてしまった
場合になると、なかなかそうもいかない。
 
もう、遥か昔になりますが、渋谷のパンテオンで
「となりのトトロ」と「火垂るの墓」の同時上映に、
その当時の彼女のリクエストで観にいったことを思い出しました。
 
すでに宮崎アニメは全盛で、映画館は満員御礼… 
トトロの住みかへ続く道…あったなあ~うちの田舎にも…
なんて思っているうちはよかったのですが、
火垂の墓が始まると、その彼女は泣きっぱなしで、
しかもその泣き方が…嗚咽ではなく、号泣なのです。
がまんできない琴線に触れっぱなしらしく、
もう人の目なんか気にせず、食い入るように
画面をみつめ、…兄弟が家を出てふたり暮らし始めてからは…
もう、大変。
 
僕は、野坂さんの原作を読んでいたので、
だいたいの筋は知っていたこともあり、
スクリーンはもうそっちのけです。
 
回りの方に頭をさげながら、
彼女の背中をさすり続け…
とうとう最後まで…
 
終わって、場内が明るくなっても、恥ずかしいやら、
びっくりやらで、彼女も泣き止まず席をたてず、
とうとう次の「トトロ」が始まってしまいました。
 
彼女が、席を立てるまで、まあこうなったら待とう…
と腹を括りましたが、…まずい…
このまま、サツキとメイがお母さんの病室にお見舞いに行く
シーンまで画面が進むと、また涙腺に火がつくのではないか…
などと心配になり…
少し収まった彼女を強引に促し、外に出たのでした。
 
 
大林宣彦の「ふたり」をK君と観たのは、その後のこと、
3部作以来、K君とはことあるごとに、大林映画を観てきたので
「ふたり」を一緒に観たのは必然の流れで、
観終わり…どちらともなく
「これは尾道に行くしかない」となり、
2泊3日で、ロケ地を二人で巡りました。 
 
まあ、そこまで、盛り上がらなくても、
“同好の士” というのは、貴重なもので、
観終わって酒を交わしているだけで、
豊かな時間だなあ…と思うわけです。
 
 
「旅する力」 著:沢木耕太郎 新潮社
 


この本などは、読み終わり、気持ちを同じくする輩と、
酒を飲むには、最高のつまみです。
 
心から感じ入る台詞が随所にあり、
久しぶりにバイブル「深夜特急」を読み返し、
ビデオを見直すか…と言う気分にさせてくれ、
ひいては、旅支度を始めたくなる…
僕にとってはそんな刺激のある危険な本です。
 
ご存じない方に、「旅の力」は、小説ではなく、
エッセイを加筆修正して、書き下ろしたものです。
 
内容は、沢木さん自信の回顧録でもあり、
「なぜ文筆業を志したのか」
「深夜特急はどうして書くことになったのか」
「旅を通じて彼が得たものは」
「旅と作家…これに影響を与えた、作品や先達」…など、
いわば沢木耕太郎の原点のお話し。
 
◆◆
 
前略…
やはり旅にはその旅にふさわしい年齢があるのだという気がする。
<中略>
「ちゃんとした人生」とはなんだろう、
ということはあるような気がする。
名の知れた会社に入り、きちんと結婚して、何人かの子供をもうける。
もちろんそういう人生もすばらしとは思う。
しかし、旅などというのはそういう人生をきちんと送ってから、
つまり定年退職でしてからゆっくりすればいいという意見には、
ハイその通りとはうなずけないところがある。
~後略
 
◆◆
 
このフレーズが、この本のコンセプトというか、
沢木さんが一番言いたいことではないのかと思う。
 
誤解されては、この本に申し訳ないので付け足すと、
この本は「なんでも旅にでなさい」という本ではありません。
動き出せないまま、今に流されていることを
揶揄したりしている訳でも、
こんな時代に一生懸命に今を歩んでいる多くの人に
警鐘を鳴らしている訳でもありません。
 
「動き出す」ことには力が必要で、
その力を得て、いったん動き出せば…
新しい世界が自分を変えてくれる。
ただ、そういうものにはルールがあって、
そのルールは自分が決めるんですよ。
 
という本です。
 
ただ、沢木さんご自身が
「オレは幸運で、豊かで、楽しい」ということを言いたいが為に、
回顧してみると、そこに旅があったという話しでもあります(笑)
 
 
この本には、さまざまな、国や都市やそこでの生活はもちろん、
作家や作品、映画の台詞やシーン…そして名言が出てくる、
のですが、僕は、そのほとんどを沢木さんが触れた…
“10年から15年に”触れています。
 
もちろん、触れ方はぜんぜん違いますが、
少なくとも「行って、見て、食べて、話して、読んで、触れて」
いたりすることが少なからずありました。
 
にも関わらず、沢木さんが影響を受け、
ご自身のそれからの人生を成長させてくれたことに較べると、
僕にはその影響が微塵もないのは…
ああ、なんというか、これは感受性という才能の違いなのでしょう。
 
「深夜特急」の発売後、
 「沢木さんはひどい。
私の恋人はあれを読んで旅に出ちゃったんですよ」
といわれ、そうこうして、人気に火がつくと…
 「26歳になったので、会社を辞めて日本を出ることにした」
という人が現われるようになったといいます。
(深夜特急の主人公が26歳だったから)
 
 
前述の旅の適齢期に通じる話でありますが、
沢木さんはこの適齢期を「食べる」ことに通じると紐解きます。
 
若いということは、あまり物事を知らず、
知らないが故に、うまいものはたくさんあり、素直に感動する。
それが、年代を重ね、なんでも食べるようになると、
若い頃に感じた感動は、薄れてゆく。
 
では、旅に戻して 
「幼ければ幼いだけ 旅をするのにはよいのか」
というとそうではない。
極めて、逆説的ではあるが、未経験者がある経験をして、
そこに感動するには、ある程度の経験が必要なのだ。
 
僕は思った。
 
どこでも、何をしてもそこに発見があり、
それを楽しもうというゆとりがあれば、
人は素直に感動する。
 
別に、構えて長期の休みを取り、
たったひとりで ユーラシア大陸に出かけなくとも、
週末に、最寄の駅から電車で、
知らない町に日帰りで行く…それくらいの勇気さえあれば。
 
ただし、ひとりで。 
どうしても、寂しい場合の道連れの場合は、
同好の士…と。
 

「旅する力」 読みました… 話してえ~ という方 
連絡ください(笑)
小汚い焼き鳥屋でいっぱいやりましょう。
 
もうひとつ、「アジアのハッピーな歩き方」 
堀田あきお&かよ キョーハン・ブックス
こちらは、漫画です。
夫婦で旅する愉快でゆるい漫画…
お気に入りです… アジア系の同好の士にはお勧めです。



◆来週、「ペプチドワクチン」を民間で実施されている 
クリニックに行ってまいります。
どうなるかは未定ですがまた報告させていただきます。 
 

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