紋谷のソコヂカラ

紋谷塾

投稿日時:2010/03/01(月) 16:17

父、母ともに学校の先生という家庭に生まれました。



友達30人いれば、そのうち1人は…
「両親ともに、教師なんだよね」…
あまり珍しくもないのでしょうが。

昭和30年代後半から40年代が僕の思春期(笑)。

田舎町のことで、どこに行っても
「もんや先生の息子さんかぇ」と見られるから、
どこに行っても、もんや先生の “息子さんらしく” 
していなくてはならない。

…別に「ならなくてはいけない」
わけではないのだけれど、
本人はそういうプレッシャーを感じていた。

小学校の家庭科の授業で、担当の先生がお休みで、
代理で母が教壇に立ったときはしんどかった。
こういうことはあってはならないと、思った。

町内の小学校が集まっての水泳大会、
200mのクロール競泳、スタートの飛び込み台から、
別の小学校の代表を引率している
父の姿を見た時は、体が硬くなった。
結果の惨敗は…ハズかしさばかり残った。

中学の写生大会で、どうみても友の作品の方がよく描けていたが、
僕の絵が入賞してしまった時…
美術の先生が父と仲が良いことで、勘ぐってしまった。

高校は、町を離れた新設校…しかしここでも、
「オマエの父さんは足が速かったんだよ」と
陸上部の教師に言われた時は…まだ
“らしく” あらねばならないのかと  ため息をついた。

直接、話した訳ではないが、
学年が3つ下の弟は、“こういうこと”で、
同級生にからかわれることがしばしばあったようで、
将来、「教師にはならない」と
早々に進路を決めたらしい。

自分に関して今にして思えば、
思春期のこういうプレッシャーは悪いものではないし、
プレッシャーがあったからこそ
出来上がった僕の人格…嫌いでない。

面と向かいはしないが、
両親はどこかで「同じ道」を求めていたと思う。

僕自身も、“自分に向いているのでは?”と
どこかで感じてもいたのですが、、
専門分野を極めて、それを他人に教え、導く…
ということ、特にそれが学校という職場で、
子供たち相手…となると、
まだ自分こそがなにものでもない子供なのに、
「教壇という一段高い場所に立っていいものか?」
と考えてしまった。

頭もなく、勤勉でもなかったことは言わずもがなで、
教職課程はとったものの…結局
「教師の道」は選ばなかった。

職業=教師ではなかったが、いくつかの職場を経て、
けっこうな歳になり、人を管理(やな言葉なので訂正)
…上司などと呼ばれ始めると必然、
「他人を教え導く」ことになる。

なんだ、結局…そういうことか。 
職業はどうでも、歳を重ねていれば、
若輩に何かを伝えることになる。

すこし、偉そうにいえば、
それが「先に生まれたものが唯一出来ること」
ではないかと思う、
そうではないと先に生まれた意味はない。

算数は教えられないが、PLとBSは説明できるし、、
ユーラシア大陸の明確な境界線は知らないが、
キプチャク草原の遊牧民の暮らしは説明できる。

人に聞いた話でも、米共和党の現在のスタンスは、
なんとなくは分かる、…が、
歴代の大統領の名前を列挙は出来ない。

憲法十五条を諳んじることは出来ないが、
在外邦人の選挙権裁判を傍聴した話し…は、出来る。

もっといえば、石垣島のキャバクラに集まる
「ないちゃー娘の心情」について1000ワードにまとめろ…
と言われれば出来る、
…だれも言わないだろうが。


根津にある、お花屋さんに関わって、
もう1年半ほどになる。

もともとは、お見舞いに来てくれた同社の社長に頼まれ、
退院したら手伝いましょうということから始まった。

お花屋さんと言うと、“お店”を想像するが、
彼の会社は店舗経営だけでなく 
温室で管理した観葉植物を一般の会社に
レンタルしてメンテナンスしたり、
植栽やガーデニングまでも行う。
ネットで花束の注文も受ければ、
会社の表玄関に鎮座する
クリスマスツリーも施工する。

創業から10年、今までは彼(社長)が引っ張ってきたが、
これからは新しいリーダーを育ててゆきたい。

…そんな理由で頼まれ、月に2回、
各部署から人選した10名弱を対象に、
会議室で塾を開いている。

塾の名は…「紋谷塾」 

ずいぶんと偉そうなのですが、
僕が命名したのではない。

大きなポイントは
「典型的な労働集約型、内向きな仕事のスタイルからの脱却」

さっぱりと言いきると、
「花と植物は育てられるが、人に対してはからっきし…」
そんな集団に活を入れる仕事。

まことに真面目で素直でよい子たちに、
「おい それじゃ駄目」と叱る、
なんだか嫌な役目ともいえる。

部署のひとつ「園芸部」などは、
一日中配送の仕事をしている…トラックで二人…
納品とメンテナンス…
この日常に、なにが出来るのか?

「制作部」はネットなどで受けた、花束の制作に明け暮れ、
時に、納品した先へのメンテナンスに出かける…
この日常に、何ができるのか?

まずは、各位部署、各人の仕事の内容と会社への意識について、
いろいろな方法でアプローチしてみた。

たとえば、

「先日、根津に越してきた、おっさん」と題し、
道で彼と会って立ち話しとなった。

あなたはこの会社の社員として、
そのおっさんには“どんな商売のニーズがあるのか
”会話から引き出してみて欲しい”。

その上で、改めて、会社の商品やサービスを提案すること。

そういうプログラム。

おっさんには、個人の趣味にはじまり、自宅の環境、
奥さんの仕事、自身の会社の業務内容や規模…など、
引き出し方によっては、
会社の商品やサービスとリンクするニーズが
どんどん出てくるように、
事前にプロフィールを用意してある。

おっさんの役は僕が引き受け、
僕は聞かれたことにしか答えない。

つまり、引き出しが甘ければ、出てくる情報は少なく、
また、どこまでイメージできるか次第で、
その中身は広がるという仕掛けだ。

ヒアリングは2人ひと組…
部署の違う相手と組ませる。 

ワークをさせ、提案はみんなの前で…共有し検証する。

ポイントは「答え探しにならないように」

「その日の新聞から、会社の事業に関係する事件をピックアップし…
 当事者、マスコミ、自分の会社、そのへんお主婦…
 などさまざまな視点で見たら、この記事はどう感じるか?」

なんてこともやった。

固定のプログラムは、各人の2週間(月に2度なので)は、
毎回、事細かにレポートさせ発表させる。

日々の仕事の中に、すべての答えはある…からそこは念入りに。

1回の時間で、必ず宿題を課す。約束事もする。

次回、出来ていないことには、特に注力を注ぎ、
その原因を自覚させ、改善の手法を伝える。

特に、部下への関わり、業務改善はもちろん 
新たな「仕掛け」への意欲や着手につながることは
拾っていこうという主旨で。

僕自身、学生時代、造園会社でバイトしていたこともあり、
配送の経験も少しあったり、母の影響で“花”は好きで…と
まあ、その程度のことで、
彼らの仕事の細かい部分(知識やスキル)…
を直接教えることは出来ないし、
餅やは餅や…でそのあたりは僕の範疇ではない。

1年が過ぎ、痛感していることはたくさんある。 
もちろん反省ばかりなのですが、
それでも彼ら彼女ら相手に真剣に関わることは、楽しい。
僕が楽しくても、彼ら彼女らの成長になっていなければ、
意味はないが、まあ少しは
貢献しているのかなあ…と思う。

へりくだっているようだが、正直な感想。 

そうそう簡単に人は変わらない。
変わることを信じなければ、
出来ないということも真理ですが。


今年度、はじめて新卒採用を行うことになり、
最終の面接もいくつか担当させていただいた。

泣かせてしまうようなこともあった。 
たとえ不採用になろうとも、
何かお土産を持たせてあげたくて、
真剣に対峙してしまう。

2年目を迎え、「塾生」も何人か入れ替わった。 
あえて持ちあげることでもないが、
社長の「進もうとする意志」が好きだ。


「三つ子の魂百まで」「スズメ百まで踊り忘れず」

思えば、父や母の時代は、職業の選択は…出来なかった。
転職なんて、ありえない考え方だった。

公務員にしては、言わずもがな。

そもそもは、教師という職業を「好きや嫌い」で
選んでいなかったのかもしれない。
(聞いたことがないのでわからないが)

それでも、「人に教える以上、自らが範となれ」
という生き方であったであろうし、
それを子供に課すのは当たり前のこと。

僕や弟が、勝手に感じていたプレッシャーとは
次元が違う話しだ。

魂や踊りを明確に習った覚えはないが、
日々の生活の中での在り方は、教わっていて、
子供と言うのはいくつになっても、
その教えから抜け出せぬものなのだと思う。

歳を重ねれば「誰もが教師」
のようなことを言ったが、
僕の場合は、とくにそういうことが苦手ではないらしい。

結果は置いておいたとしても、
好きこそ…であり、そういう性癖は、
やはり受け継いだものとしか思えない。

それでも、僕のような大人は、
教師ではなく塾長なのでしょう。

教育委員会や指導要綱などは 
くそくらェと嘯き、
表面だけのパワハラな親御さんには説教をして、
無能教師の烙印で放逐…
そういうことになっていた気がしますから。

コメント


ワシも最近、会社の若いやつらをどうすりゃもっとエラくできるのか、そればっか考える。(うまい表現見つからず。『育てる』じゃエラそうだし、『エラくする』じゃ出世させると誤解されるかも・・・) 自分自身のリーマンとしての先が見えちゃったからかなー。自分が事を成してきた証拠は、人への影響にしか残せないのかもね。

Posted by ツルピカ at 2010/03/02 01:25:01+09 PASS:

元気そうで…なによりです。
東京駅で、社長と叫ぶと100人
振り返るらしいが…(ホントか否か)
先生と叫ぶと何人
振り返るんだろうか?

今度、帰郷の際は、連絡チョーダイ。

Posted by 佐野 at 2010/03/06 14:03:19+09 PASS:
名前:
Eメールアドレス:
コメント:
ファイル

画像の英字5文字を入力して下さい。:
パスワード:

トラックバック一覧

サイト検索

<< 2024年4月  >>

Sun Mon Tue Wed Thu Fri Sat
  1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30        

紹介メール

このページを紹介するメールを送信する事ができます

あなたの名前:
あなたのメールアドレス:
配信先メールアドレス
(複数のメールアドレスに送る場合は改行して1行に1メールアドレスを書いてください。):
題名:
紹介文:

MON:U アマゾンストア

(紋谷さんお薦めの逸品を手にしてみませんか)