紋谷のソコヂカラ 2009/12
わたしの体に 何をする.
投稿日時:2009/12/19(土) 19:01日々、自分の周辺で起こる、さまざまな出来事のせいで、
困ったなあ…とか、嫌だなあ…とか、しんどいなあ…とか、
面倒くさいなあ…とか、悲しいなあ…とか、
なかったことにしたいなあ…とか、
そういう感情が湧きあがったときに、
「まあ、なんとかなるさ」と大きく構えていられる、
そんな人間でありたいと思って生きた。
今のボクとって、
「病院に行き、検査を受け、病気の進行度合いを確認して、
医師と治療方針を相談する」
この行為は、もっか最大の関心事であり、
癌野郎が(あえて野郎とする)ある日、ぴゅー…と
煙とともに壺の中に消えてくれない
ことは、あらかじめわかっている以上、
イージー!イージー!とも ケセラセラとも、
なんくるないさぁ~とも、マイペンライとも、
なかなかに思えず、検査を受けに行く1週間前から、
心の中にでっかくて黒い石があるような
そんな気分となってしまう。
そしてこの黒い石は、毎日、どんどん、でっかくなる。
男としての器が小さいなあ
小さい、小さい…と自覚はするものの、
どうしようもない。
14日は件の病院へ行く日。
…前の晩から眠れず、気が付いたら、
この黒い石が最高にでっかくなっていた。
このままではつぶされてしまうと思い、
なにか手立てはないかと思案した。
…そこで、思いついたことは、
「今日は僕自身の体の具合を確認しにゆくのではなく…
誰か他人の、自分とは関係のない人の病状について
取材をしにゆく…
そういう風に考えられないか」と考えた。
考えるだけでは、頑固な自分はだまされてくれないので、
なにか具体的な手段は…と更に思案した。
ひとつは、取材なんだから“カメラ”を持参して、
いろいろ撮ってみるのは、どうだろう…
そうそうこの手は昔も使ったが、
撮影するという行為は客観的に物事を捉えるには
最適な行為だった、
よしよし…と決めた。
そうなると、取材なんだから
今日の出来事を文章にまとめる必要がある。
はじめから、まとめるつもりで臨めば、
ことらも客観的に見聞きする…よしよし。
こう考えると気持ちが楽になってくる。
どうせなら、チャカしてしまおう。
…そうだ、わが友人、宮田クンの
「おもしろエッセイ風」におもいっきり
チャカしてしまおう。
…となった。
宮田君については後述する。
「すまん…とりあえず宮田パクル!」
■■ ということで 以下、宮田風でまとめてみた ■■
※注…あくまで“風”である。
あのフィレンツェ風チキンのローストの“風”であり、
「うーんアールデコ風の素敵なお宅ですネ」の“風”であり、
様子するに、「オマエ、今日の3ゲン…出る?…的な…」の
“的な”と同意であり、
「おっちゃん!これ…ヴィトンちゃうやん…
ロゴんとこ…BITON…てなってるやん!」の“B”に相当する…
様子するに「偽物」であります。
でありますから、わたしのまがい物の文章を読んで、
宮田クンのエッセイがこの程度の代物とは思わないで
もらいたい。彼のエッセイはとてもおもしろい。
●●●
今日は、検査だ。
血液検査とCTのふたつを午前中にこなし、
午後にもう一度出直し、
主治医のもとに外来で伺うという段取りとなる。
病院までは車で20分…環状道路から幹線道を経由すれば、
嵐のCDに併せてフン♪フン♪…と
3、4曲鼻唄を歌っていれば着いてしまう。
別に嵐でなくてもよいのでは…と思うのは素人の浅はかさ、
やはりこういう時は嵐である。
この桜井君のなんともノリにくいラップがいいのである。
…と、僕のフン♪フン♪…が4曲目を越えたあたりで、
なにやら今日は道が混んでいることに気付いた。
さっきからぜんぜん前に進んでいないではないか。
何をしているのだ、このままでは検査の時間に遅刻してしまう。
前を見ると、環状道路から幹線道の曲がり角までに、
車の長蛇の列ができている。
もっと前に気付けよ…
しかし、こういう時に冷静なのが大人というもの、
決して桜井君のせいではない。
おっ!目の前に信号が…よし!ここを曲がってしまえ!
行ったことはないが、なんとなく行けるのでは、
と思ったらハンドルを切っていた。
自慢ではないがわたしは、東大いや当代、稀にみる
方向音痴である。
駅からの帰宅途中、途中のコンビニに寄り、
買い物を済ませ外に出て…
また駅に向かう道を歩いてしまうことが
“たびたび” ある男である。
不安がよぎらないわけではないが、
こういう時は決断と実行である。
…この決断は見事に当たった。
なんとなく右曲がったり、左曲がったりしていたら…
病院までつながる道に出たではないか。
そういうことだ。
たいていのことは成せばなるのである。
「いまどき…ナビはないのか?」と
不思議に思う方もいるだろう。
もちろんない。
文明の利器に頼るなど笑止千万。
男子たるもの最後は自らの感に頼れ!である。
なんとなく曲がっていれば、
最後は目的地に着くようになっている。
無事に病院に着いた。
しかし駐車場に入れない。
駐車場が、晴れた日曜日の原宿のH&Mのセール前くらいに
混んでいる(行ったことはない)。
なんとか停めることができて、受付を済ませ、
まずは「採血」に向かう。…
ここがまた混んでいる。
お隣のFOREVER 21も負けじとセールを始めてしまい
歩道歩けないじゃないか!ってほど混んでいる。
(行ったことはこちらもない)
今日はとりわけ、
神奈川県中の癌患者が勢ぞろいしているのでは…
と思うほど混んでいる。
見渡せば採血ルームには50人くらいの
じいさんばあさんが。
部屋に入りきれず廊下にもじいさんばあさん…
もうあたりかまわずじいさんばあさんである。
そこに颯爽と凛々しく活力に溢れたわたしが登場する。
受付のカードを渡すと、
「…CTの検査入ってますね?…このままじゃ間に合わないので、
今、採血の受付だけされて、
先にCT行かれたほうがよいですよ」
と看護師が言う。
CTの予約時間には、まだ40分もあるではないか。
なんのために知らない道にチャレンジしたのだ。
あえて危険を冒してまでたどり着いた苦労が水の泡ではないか。
こんな凛々しい若者になにをする!
しかしアナウンスされる受付番号は、
まだわたしの100番も前のようだ…
くやしいが、ここは言うなりになるしかないようだ。
少し、困った顔をしていると、
じゃあ…CTに行っている間に、
順番が来たら 適当に順送りにしてくれるという。
そいつはラッキイ。やはり凛々しく活力あるわたしに
はそうでなくてはいけない。
エレベーターに乗り、レントゲンの受付に行く。
少し待って、僕の番となる…?
「もんやさん すいません。
…造影剤の同意書書かれています?」
「はあ?…ええ…先日 書きましたが」
「そうですか。おかしいですね。
カルテの中に見当たらないのです」
「はい?」
「少しお待ちください」
CT撮影を鮮明にするために入れる造影剤は、
アレルギー症状がでることもあり、
同意書が義務付けられている。
前回来た折に、確かに記入しているはずなのだが、
どうもそれが見当たらないらしい。
廊下のベンチで待たされてると、また看護師が…
「どうも、ないようなんです。
同意したということでいいでしょうかね?」とやってきた。
いいのかそれで、そっちがいいならこっちはいいが、
そういう細かいところいい加減だと、
倫理規定も紙くずになるぞ。
「はい。もちろんかまいませんが。
わたしは、まじめに斜めに生きてきた人ですから、
終わりよければすべてよし。
なんてことが座右の銘だったりしていますし、
ただなんだか、そういう時に限って、
事故とか起こるような気がするというか…
ええ、もちろんたかが造影剤ですから…
事故って言ってもねえ。そりゃあもちろん。
ええ 心配なんかしていま…」
「ありました ありました!」
と違う看護師が向こうから大きな声で言っている。
「もんやさんのカルテ膨大でして…どうも同意書が、
紛れ込んでいたようですいません」
膨大で悪うござんした。
ではこちらとCTルームに。
受けたことのある方は、ご存知でしょうが、
CTの撮影はあっという間に終わる。
MRIやPETに比べるとほんとうに短くて助かる。
…とここで切りだしてみる。
「 あの?このマシン…撮ってもいいですか?」
と聞くと。
「…ええ(笑)…どうぞ」と言うので、パチリ。
しかし、どうもマシンだけというのは味気ない
これでは、臨場感というものがでない。
「看護師さん …横に立ってもらえますか?」
「ええ!?わたしなんか…でも…
お化粧もしてないし…困ったわ…どうしよう…」
うーん長くなりそうなので、
「じゃあ 僕を入れて撮ってもらっていいですか?」
「ああ…はい(少し残念そうだ)」
パチリ
「わたし 長くここにいますけど
写真撮られた方は初めてですよ」
いつの間にかレントゲン技師の医者も来ていて、
笑いながらうなずいている。
「はあ。癌だからって、
気持ち暗くしているだけじゃ、もったいないじゃないですか。
なんでも楽しくですよ」
採血ルームに戻る。
相変わらずじいさんばんさんで溢れている。
また来たな!この無駄に凛々しい若者め!
と何人かが睨んでいる。
どうも。
僕の番号は呼ばれたばかりのようであったが、
少し待つと約束通り呼んでくれた。
無事に採血も済み…
いったん自宅に戻るとする。
~~~ ~~~
夕方4時
出直してやってきた。
泌尿器外来は1階の一番奥…
ここも日中は、じいさんばあさん…
特にじいさんで溢れている。
しかし、この時間ともなると受付にはほとんど人がいない。
わたしのほかには、ご夫婦らしきひと組だ。
看護師が話しかけている。
どうも、手術のために入院が決まり、その説明を受けている。
放心状態の夫、看護師の説明を聞きもらさまいとする妻…
失礼ながらわたしには見なれた光景であります。
以前、にも同じようなご夫婦を見かけたことがある。
「俺が死んだら…すまんな…俺が死んだら…すまんな」
「ばか言ってないで…」
「すまんな…すまん…」
「……」
その後、その旦那さんと同じ病室になった。
旦那さんは一日中、元気がなく…同僚が訪ねてきても
娘がお見舞いに来てもあまり話さず
日がな静かに過ごしていた。
奥さんがやってきたときだけ、少ししゃべる。
それも「ああ」とか「うん」とか…
手術の説明に担当医が来た時も…
質問するのはぜんぶ奥さん
本人はただ、黙って聞いている。
それが手術が終わり、術後の経過も良かったようで
無事退院の日が決まると一変した。
「ははは 心配することないんだよ。もうだいじょうぶ。
なあ…こいつが心配性だから…まったく大げさなんだよ」と
見舞客に応え、
「飯がうまけりゃ、もう少しいたいんだけどなあ…
おい明日 煮物でも持ってきてくれよ」
と奥さんに言いつける。
奥さんは、何も言わず にこにこと黙って聞いている。
まったく男とはなんと弱い生き物か…とも思うが…
なんだかんだひっくるめてうらやましい。
「CTの画像では、肺の腫瘍が大きくなってる以外は、
他への転移はみられませんね」
パソコンには僕の輪切りの画像が映っている。
首先から足の付け根まで、
マウスの操作でパッパと切り替わる。
どうもこの画像は見るに堪えない。
なんだか、背中がむず痒くなる。直視できない。
しかし、それでは困るので、これはそう。
イカ飯だと思うことにした。
「9月の検査では、GOTの値も高かったから…
肝臓転移も考えたのですが、
やはり画像には何もないですね」
「もともとの首のリンパ節は?」
「ええ。こちらも、変化ないですね」
主治医はイカ飯の…
一番太い部分 肺の画像を映し…
「やはり この肺の腫瘍が
AFP値を引き上げているんでしょうね」
「でも、先生。12000にもなっているんですよ。
その原因がこの肺の腫瘍だけ?」
「ええ。結局、数じゃないんです。
その腫瘍がひとつでも…
大きな作用があればAFP値はあがるんですよ」
「まったく、こいつは…
わたしの体に何をする!! って感じですね」
実際、この腫瘍は悪の親玉というわけではないのだろう。
あくまでひとつのアラート。
こいつが消滅しても、体の中の微に入り細に入る癌細胞が、
完全になくなることとイコールではない。
それでも、目下の敵はこいつと断定すれば、目標が生まれる。
見えざる敵と対する恐怖よりかは、
ぜんぜんマシというものさ。
「先生 この画像写真撮ってもいいですか?」
「…?ああ…ははは…こんなの撮るのもんやさんだけですよ」
「ついでに、先生も」 パチリ
最近というか、ここ1年。
会う人ごとに「もんやさんは元気そうだ」とか、
「太った」とか「やせないんですか?」とか
「ぜんぜん病気に見えない」とか
「まだ、死なないのですか?」とか、
そんなことばっか言われて、
まことにどうもくやしい思いをしていた。
精一杯 元気そうに見せている
このわたしの気遣いがまったく伝わっていない。
これではいかんと思っていたので、
これ見よがしに、いやこれ幸いにと…
イカ飯画像を撮ってやった。
「で…どうしましょうか?」
きた。どうしましょうか?…
ここでひいては男がすたる
抗がん剤は入れたくはない
入れたくはないが、ここはひとついれておくべきだ。
そして、目下の敵を駆逐するのだ。
「はい。予定通りにお願いします」
…といっても この病院は混んでいる…
すぐの治療は難しいのではと思っていたら
「ああ。泌尿器の○○ですが…ええ。
入院の手配をお願いしたいのです。
お忙しい方で…ええ。
もんやさんと言って…ええ
もう慣れていらっしゃる方なんで、ええ
一番早く日曜日の午後に入っていただき…ええ
月曜から治療を…どうでしょうか?」
と病棟のナースセンターで婦長さんと話している。
…別に忙しくはないが ナイスなフォローです先生。
「ああ…だいじょうぶ。ではそれでお願します」
ということで、21日月曜日からの投薬が決まりました。
入れてしまうと
体調がグダグダになるので
このブログが書けるよう回復するまで
しばしお待ちください。
また、投薬後の効果に感しましては、
1カ月近くはかかると思われます。
結果がでましたら、
またここでご報告させていただきます。
以上で報告は終わりです。
はじめに今回は宮田風
おもしろエッセイ風にすると言ったのですが、
途中で、こりゃ無理がある…と。
インドやミャンマーやラオスやカンボジアでの
バックパッカーの見聞きする新鮮な体験や
珍妙なるベトナムの盆栽や
南米のジェットコースターの話しでこそ、
この文体は活きるのであって、
病気や病院の話は そもそもが暗すぎて
なんか妙にブラックな自虐的なユーモアが先立ってします。
したがってなんとも中途半端な形となりまして、
まことにあいすいません。
文体を拝借しました宮田クンにはお礼として
最後に泌尿器外来の美人看護師さんの写真をお礼として、
差し上げます。
もちろん癌でもないし神奈川県民でもないあなたが、
彼女と知り合うことはないとは思いますが。
■宮田 珠己■
旅行記を中心に活躍している、おもしろエッセイスト。
追いつき追い越せ“椎名誠”をテーマに著書多数。
「ときどき意味もなくずんずん歩く」
「わたしの旅に何をする。」
「晴れた日は巨大仏を見に」:幻冬舎
「ウはウミウシのウ」
「旅の理不尽」:小学館
「東南アジア四次元日記」:旅行人
ほか
読むと旅行に行きたく本ばかりなので、
そこのところはご注意
また、あまりに面白すぎて
どうも本屋さんが仕入れ制限をしているらしく
探しても書店にないものも多いので、
ちゃんと注文してください。
困ったなあ…とか、嫌だなあ…とか、しんどいなあ…とか、
面倒くさいなあ…とか、悲しいなあ…とか、
なかったことにしたいなあ…とか、
そういう感情が湧きあがったときに、
「まあ、なんとかなるさ」と大きく構えていられる、
そんな人間でありたいと思って生きた。
今のボクとって、
「病院に行き、検査を受け、病気の進行度合いを確認して、
医師と治療方針を相談する」
この行為は、もっか最大の関心事であり、
癌野郎が(あえて野郎とする)ある日、ぴゅー…と
煙とともに壺の中に消えてくれない
ことは、あらかじめわかっている以上、
イージー!イージー!とも ケセラセラとも、
なんくるないさぁ~とも、マイペンライとも、
なかなかに思えず、検査を受けに行く1週間前から、
心の中にでっかくて黒い石があるような
そんな気分となってしまう。
そしてこの黒い石は、毎日、どんどん、でっかくなる。
男としての器が小さいなあ
小さい、小さい…と自覚はするものの、
どうしようもない。
14日は件の病院へ行く日。
…前の晩から眠れず、気が付いたら、
この黒い石が最高にでっかくなっていた。
このままではつぶされてしまうと思い、
なにか手立てはないかと思案した。
…そこで、思いついたことは、
「今日は僕自身の体の具合を確認しにゆくのではなく…
誰か他人の、自分とは関係のない人の病状について
取材をしにゆく…
そういう風に考えられないか」と考えた。
考えるだけでは、頑固な自分はだまされてくれないので、
なにか具体的な手段は…と更に思案した。
ひとつは、取材なんだから“カメラ”を持参して、
いろいろ撮ってみるのは、どうだろう…
そうそうこの手は昔も使ったが、
撮影するという行為は客観的に物事を捉えるには
最適な行為だった、
よしよし…と決めた。
そうなると、取材なんだから
今日の出来事を文章にまとめる必要がある。
はじめから、まとめるつもりで臨めば、
ことらも客観的に見聞きする…よしよし。
こう考えると気持ちが楽になってくる。
どうせなら、チャカしてしまおう。
…そうだ、わが友人、宮田クンの
「おもしろエッセイ風」におもいっきり
チャカしてしまおう。
…となった。
宮田君については後述する。
「すまん…とりあえず宮田パクル!」
■■ ということで 以下、宮田風でまとめてみた ■■
※注…あくまで“風”である。
あのフィレンツェ風チキンのローストの“風”であり、
「うーんアールデコ風の素敵なお宅ですネ」の“風”であり、
様子するに、「オマエ、今日の3ゲン…出る?…的な…」の
“的な”と同意であり、
「おっちゃん!これ…ヴィトンちゃうやん…
ロゴんとこ…BITON…てなってるやん!」の“B”に相当する…
様子するに「偽物」であります。
でありますから、わたしのまがい物の文章を読んで、
宮田クンのエッセイがこの程度の代物とは思わないで
もらいたい。彼のエッセイはとてもおもしろい。
●●●
今日は、検査だ。
血液検査とCTのふたつを午前中にこなし、
午後にもう一度出直し、
主治医のもとに外来で伺うという段取りとなる。
病院までは車で20分…環状道路から幹線道を経由すれば、
嵐のCDに併せてフン♪フン♪…と
3、4曲鼻唄を歌っていれば着いてしまう。
別に嵐でなくてもよいのでは…と思うのは素人の浅はかさ、
やはりこういう時は嵐である。
この桜井君のなんともノリにくいラップがいいのである。
…と、僕のフン♪フン♪…が4曲目を越えたあたりで、
なにやら今日は道が混んでいることに気付いた。
さっきからぜんぜん前に進んでいないではないか。
何をしているのだ、このままでは検査の時間に遅刻してしまう。
前を見ると、環状道路から幹線道の曲がり角までに、
車の長蛇の列ができている。
もっと前に気付けよ…
しかし、こういう時に冷静なのが大人というもの、
決して桜井君のせいではない。
おっ!目の前に信号が…よし!ここを曲がってしまえ!
行ったことはないが、なんとなく行けるのでは、
と思ったらハンドルを切っていた。
自慢ではないがわたしは、東大いや当代、稀にみる
方向音痴である。
駅からの帰宅途中、途中のコンビニに寄り、
買い物を済ませ外に出て…
また駅に向かう道を歩いてしまうことが
“たびたび” ある男である。
不安がよぎらないわけではないが、
こういう時は決断と実行である。
…この決断は見事に当たった。
なんとなく右曲がったり、左曲がったりしていたら…
病院までつながる道に出たではないか。
そういうことだ。
たいていのことは成せばなるのである。
「いまどき…ナビはないのか?」と
不思議に思う方もいるだろう。
もちろんない。
文明の利器に頼るなど笑止千万。
男子たるもの最後は自らの感に頼れ!である。
なんとなく曲がっていれば、
最後は目的地に着くようになっている。
無事に病院に着いた。
しかし駐車場に入れない。
駐車場が、晴れた日曜日の原宿のH&Mのセール前くらいに
混んでいる(行ったことはない)。
なんとか停めることができて、受付を済ませ、
まずは「採血」に向かう。…
ここがまた混んでいる。
お隣のFOREVER 21も負けじとセールを始めてしまい
歩道歩けないじゃないか!ってほど混んでいる。
(行ったことはこちらもない)
今日はとりわけ、
神奈川県中の癌患者が勢ぞろいしているのでは…
と思うほど混んでいる。
見渡せば採血ルームには50人くらいの
じいさんばあさんが。
部屋に入りきれず廊下にもじいさんばあさん…
もうあたりかまわずじいさんばあさんである。
そこに颯爽と凛々しく活力に溢れたわたしが登場する。
受付のカードを渡すと、
「…CTの検査入ってますね?…このままじゃ間に合わないので、
今、採血の受付だけされて、
先にCT行かれたほうがよいですよ」
と看護師が言う。
CTの予約時間には、まだ40分もあるではないか。
なんのために知らない道にチャレンジしたのだ。
あえて危険を冒してまでたどり着いた苦労が水の泡ではないか。
こんな凛々しい若者になにをする!
しかしアナウンスされる受付番号は、
まだわたしの100番も前のようだ…
くやしいが、ここは言うなりになるしかないようだ。
少し、困った顔をしていると、
じゃあ…CTに行っている間に、
順番が来たら 適当に順送りにしてくれるという。
そいつはラッキイ。やはり凛々しく活力あるわたしに
はそうでなくてはいけない。
エレベーターに乗り、レントゲンの受付に行く。
少し待って、僕の番となる…?
「もんやさん すいません。
…造影剤の同意書書かれています?」
「はあ?…ええ…先日 書きましたが」
「そうですか。おかしいですね。
カルテの中に見当たらないのです」
「はい?」
「少しお待ちください」
CT撮影を鮮明にするために入れる造影剤は、
アレルギー症状がでることもあり、
同意書が義務付けられている。
前回来た折に、確かに記入しているはずなのだが、
どうもそれが見当たらないらしい。
廊下のベンチで待たされてると、また看護師が…
「どうも、ないようなんです。
同意したということでいいでしょうかね?」とやってきた。
いいのかそれで、そっちがいいならこっちはいいが、
そういう細かいところいい加減だと、
倫理規定も紙くずになるぞ。
「はい。もちろんかまいませんが。
わたしは、まじめに斜めに生きてきた人ですから、
終わりよければすべてよし。
なんてことが座右の銘だったりしていますし、
ただなんだか、そういう時に限って、
事故とか起こるような気がするというか…
ええ、もちろんたかが造影剤ですから…
事故って言ってもねえ。そりゃあもちろん。
ええ 心配なんかしていま…」
「ありました ありました!」
と違う看護師が向こうから大きな声で言っている。
「もんやさんのカルテ膨大でして…どうも同意書が、
紛れ込んでいたようですいません」
膨大で悪うござんした。
ではこちらとCTルームに。
受けたことのある方は、ご存知でしょうが、
CTの撮影はあっという間に終わる。
MRIやPETに比べるとほんとうに短くて助かる。
…とここで切りだしてみる。
「 あの?このマシン…撮ってもいいですか?」
と聞くと。
「…ええ(笑)…どうぞ」と言うので、パチリ。
しかし、どうもマシンだけというのは味気ない
これでは、臨場感というものがでない。
「看護師さん …横に立ってもらえますか?」
「ええ!?わたしなんか…でも…
お化粧もしてないし…困ったわ…どうしよう…」
うーん長くなりそうなので、
「じゃあ 僕を入れて撮ってもらっていいですか?」
「ああ…はい(少し残念そうだ)」
パチリ
「わたし 長くここにいますけど
写真撮られた方は初めてですよ」
いつの間にかレントゲン技師の医者も来ていて、
笑いながらうなずいている。
「はあ。癌だからって、
気持ち暗くしているだけじゃ、もったいないじゃないですか。
なんでも楽しくですよ」
採血ルームに戻る。
相変わらずじいさんばんさんで溢れている。
また来たな!この無駄に凛々しい若者め!
と何人かが睨んでいる。
どうも。
僕の番号は呼ばれたばかりのようであったが、
少し待つと約束通り呼んでくれた。
無事に採血も済み…
いったん自宅に戻るとする。
~~~ ~~~
夕方4時
出直してやってきた。
泌尿器外来は1階の一番奥…
ここも日中は、じいさんばあさん…
特にじいさんで溢れている。
しかし、この時間ともなると受付にはほとんど人がいない。
わたしのほかには、ご夫婦らしきひと組だ。
看護師が話しかけている。
どうも、手術のために入院が決まり、その説明を受けている。
放心状態の夫、看護師の説明を聞きもらさまいとする妻…
失礼ながらわたしには見なれた光景であります。
以前、にも同じようなご夫婦を見かけたことがある。
「俺が死んだら…すまんな…俺が死んだら…すまんな」
「ばか言ってないで…」
「すまんな…すまん…」
「……」
その後、その旦那さんと同じ病室になった。
旦那さんは一日中、元気がなく…同僚が訪ねてきても
娘がお見舞いに来てもあまり話さず
日がな静かに過ごしていた。
奥さんがやってきたときだけ、少ししゃべる。
それも「ああ」とか「うん」とか…
手術の説明に担当医が来た時も…
質問するのはぜんぶ奥さん
本人はただ、黙って聞いている。
それが手術が終わり、術後の経過も良かったようで
無事退院の日が決まると一変した。
「ははは 心配することないんだよ。もうだいじょうぶ。
なあ…こいつが心配性だから…まったく大げさなんだよ」と
見舞客に応え、
「飯がうまけりゃ、もう少しいたいんだけどなあ…
おい明日 煮物でも持ってきてくれよ」
と奥さんに言いつける。
奥さんは、何も言わず にこにこと黙って聞いている。
まったく男とはなんと弱い生き物か…とも思うが…
なんだかんだひっくるめてうらやましい。
「CTの画像では、肺の腫瘍が大きくなってる以外は、
他への転移はみられませんね」
パソコンには僕の輪切りの画像が映っている。
首先から足の付け根まで、
マウスの操作でパッパと切り替わる。
どうもこの画像は見るに堪えない。
なんだか、背中がむず痒くなる。直視できない。
しかし、それでは困るので、これはそう。
イカ飯だと思うことにした。
「9月の検査では、GOTの値も高かったから…
肝臓転移も考えたのですが、
やはり画像には何もないですね」
「もともとの首のリンパ節は?」
「ええ。こちらも、変化ないですね」
主治医はイカ飯の…
一番太い部分 肺の画像を映し…
「やはり この肺の腫瘍が
AFP値を引き上げているんでしょうね」
「でも、先生。12000にもなっているんですよ。
その原因がこの肺の腫瘍だけ?」
「ええ。結局、数じゃないんです。
その腫瘍がひとつでも…
大きな作用があればAFP値はあがるんですよ」
「まったく、こいつは…
わたしの体に何をする!! って感じですね」
実際、この腫瘍は悪の親玉というわけではないのだろう。
あくまでひとつのアラート。
こいつが消滅しても、体の中の微に入り細に入る癌細胞が、
完全になくなることとイコールではない。
それでも、目下の敵はこいつと断定すれば、目標が生まれる。
見えざる敵と対する恐怖よりかは、
ぜんぜんマシというものさ。
「先生 この画像写真撮ってもいいですか?」
「…?ああ…ははは…こんなの撮るのもんやさんだけですよ」
「ついでに、先生も」 パチリ
最近というか、ここ1年。
会う人ごとに「もんやさんは元気そうだ」とか、
「太った」とか「やせないんですか?」とか
「ぜんぜん病気に見えない」とか
「まだ、死なないのですか?」とか、
そんなことばっか言われて、
まことにどうもくやしい思いをしていた。
精一杯 元気そうに見せている
このわたしの気遣いがまったく伝わっていない。
これではいかんと思っていたので、
これ見よがしに、いやこれ幸いにと…
イカ飯画像を撮ってやった。
「で…どうしましょうか?」
きた。どうしましょうか?…
ここでひいては男がすたる
抗がん剤は入れたくはない
入れたくはないが、ここはひとついれておくべきだ。
そして、目下の敵を駆逐するのだ。
「はい。予定通りにお願いします」
…といっても この病院は混んでいる…
すぐの治療は難しいのではと思っていたら
「ああ。泌尿器の○○ですが…ええ。
入院の手配をお願いしたいのです。
お忙しい方で…ええ。
もんやさんと言って…ええ
もう慣れていらっしゃる方なんで、ええ
一番早く日曜日の午後に入っていただき…ええ
月曜から治療を…どうでしょうか?」
と病棟のナースセンターで婦長さんと話している。
…別に忙しくはないが ナイスなフォローです先生。
「ああ…だいじょうぶ。ではそれでお願します」
ということで、21日月曜日からの投薬が決まりました。
入れてしまうと
体調がグダグダになるので
このブログが書けるよう回復するまで
しばしお待ちください。
また、投薬後の効果に感しましては、
1カ月近くはかかると思われます。
結果がでましたら、
またここでご報告させていただきます。
以上で報告は終わりです。
はじめに今回は宮田風
おもしろエッセイ風にすると言ったのですが、
途中で、こりゃ無理がある…と。
インドやミャンマーやラオスやカンボジアでの
バックパッカーの見聞きする新鮮な体験や
珍妙なるベトナムの盆栽や
南米のジェットコースターの話しでこそ、
この文体は活きるのであって、
病気や病院の話は そもそもが暗すぎて
なんか妙にブラックな自虐的なユーモアが先立ってします。
したがってなんとも中途半端な形となりまして、
まことにあいすいません。
文体を拝借しました宮田クンにはお礼として
最後に泌尿器外来の美人看護師さんの写真をお礼として、
差し上げます。
もちろん癌でもないし神奈川県民でもないあなたが、
彼女と知り合うことはないとは思いますが。
■宮田 珠己■
旅行記を中心に活躍している、おもしろエッセイスト。
追いつき追い越せ“椎名誠”をテーマに著書多数。
「ときどき意味もなくずんずん歩く」
「わたしの旅に何をする。」
「晴れた日は巨大仏を見に」:幻冬舎
「ウはウミウシのウ」
「旅の理不尽」:小学館
「東南アジア四次元日記」:旅行人
ほか
読むと旅行に行きたく本ばかりなので、
そこのところはご注意
また、あまりに面白すぎて
どうも本屋さんが仕入れ制限をしているらしく
探しても書店にないものも多いので、
ちゃんと注文してください。
観なきゃね 2009
投稿日時:2009/12/13(日) 20:08■ 年末特別対談 ■
“アロハ坊主さんと、今年の映画を語る”
今日は、わざわざ戸塚までお越しいただきありがとうございます。
さて、早速ですが、今年公開された映画、
全般についてどんな感想をお持ちですか?
アロハ
「全般的に、今年は面白い作品が少ない年でしたね。
あとは、これは、面白い作品と思える作品と、
そうでない“駄作”(笑)との差が激しかったような…
もんやさんはいかがですか?」
もん
「同感ですね。特に、大作ハリウッドものが…ひどい。
でも、そんな中、やはり これは観てほしいという
作品を紹介したいと思います」
…… まずは、お互いの今年のベスト5の発表から
もん
アロハ
もん「…なるほど、事前に打ち合わせなしの割には、何作品か。
かぶってますね。実は正直、この企画の前に、
まったくかぶらないんじゃないかと、思ってたんです…」
アロハ「それは、なぜですか?…僕は、先に言ったように…
今年は落差が激しいってところ、おんなじ感想だから、
選ぶとなるとかぶらざる負えないかな…と」
もん「そうですね。その面白い感覚って、人それぞれで、
それを言ったら同じなんだけど まあそれでいいわけで。
…でも、それでも、やっぱり観ておくべき、
面白いものというものは絶対にあって、
その面白いものを見分ける力もあると思うのです。
その意味では、お互い、その力はあるということで(笑)」
アロハ「…でなけりゃ、年末にこんな
愚にもつかない対談しませんよね。
自画自賛ぽいですけど」
もん「ただ、お互い、今年の全部を観ていない。
だから漏れてるかもしれませんし、厳密に順位というのは、
つけられないもんだから、
そこんところは、大目に見ていただくということで…
でも、せっかくですからこの場、2人のお勧めということで、
決められたらベスト3くらいきめましょ。」
アロハ「確かに… それでお願いします」
もんや「まず1位…ははは お互い相当観ているのに…
見事に…おんなじですね」
アロハ「おなじですねえ… この作品は気持ちエグラレましたね。
これがオリジナル脚本というのはもうすごいですね。」
もんや「時をかける少女…で資金が集まったそうですからね」
アロハ「田舎のお盆休みとバーチャルな世界
この対比の着想がすごいし、老若男女が楽しめる
物語に仕上げているところがすごい」
もんや「僕、この映画の感想を人に話す時に…
泣いちゃってんですよね。ぼろぼろ。」
アロハ「どのあたりで」
もんや「…隠し子、侘助が、ばあちゃん訃報聞いて、
戻るところ…あそこ!…あそこはやばい!」
アロハ「僕は、なんと言っても、少し内気な理科系男子の、
小磯健二クン。よそ者の彼が、最後まで奮闘する、
そこに共感した。侘助クンもそうですが、
いまの若者のキーワードは“疎外感”だと思うんですよ。
そういうと、ネガティブな形容詞ですけど、
その疎外感も時と場合によっては、
生きるエネルギーに変えられるってことが伝わってくる」
もんや「ばあちゃんの愛?」
アロハ「そうそう」
もんや「じゃあもうこれは、もうお互い大絶賛ですから。
文句なく今年の1位でよろしいいですかね?」
アロハ「そうですね」
■■ 1位 「サマーウォーズ」 ■■
もんや「2位は かぶってますけど、
順位が違う… 点数化してみると…次が、母なる証明」
もんや「ポン・ジュノ監督大好き。
待望の新作で、楽しみにしていました。
やっぱり、ただものじゃない」
アロハ「世の中の倫理観とか、無視して、自分の信じる道、
進む主人公…好きなんですよね」
もんや「…母の愛…ですね」
アロハ「今回は、そうですね」
もんや「ラスト前の草原のダンス…どう見ますか?」
アロハ「…あれは、監督の観客への挑戦ですね。
だから、冒頭にも印象的に使ったんでしょうね。」
もんや「…演出ですよね。バスの中で最後…乗客に合せて踊りだす
あのシーンとは、ニュアンスが、違いますよね。
原題はMATHERだけ。
そこの邦題は“証明”をつけた。センスあるなあ」
アロハ「キム・ヘジャとウォンビン…役者としては両方すごい。
ちょっと意地悪な質問ですが、
あえてどちらの演技がよかったですか」
もんや「それは もう ウォンビンです」
アロハ「なぜですか?」
もんや「母の演技は極論言えば、ほかにできる
韓国女優がいると思います。
でも、あの精神薄弱さの演技は、
できそうで誰にもできないところを感じました」
アロハ「少年の無邪気さの怖さ」
もんや「日本の俳優も見習ってほしい(笑)」
アロハ「では、第2位で」
■■ 2位 「母なる証明」 ■■
もんや「次は、ディア・ドクター。アロハさんが進める根拠は?」
アロハ「もんやさんにとって、ポン・ジュノが
タダものじゃないように、
僕にとっては西川美和監督がタダものじゃない」
もんや「蛇イチゴ ゆれる … 西川監督、進化してますか?」
アロハ「してますね。全体的に、人間って不可解…
てところの描き方がより深かったです」
もんや「問題はラスト。ここは触れずにおけないですね」
アロハ「その前に…いいですか。
僕どうしてもいいたいんですが、
“人間って不可解”ってことが、
登場人物すべての設定に表れていました」
もんや「みんなひと癖ある。特に後半の事情聴取…
あの辺りの描き方はタダものじゃない」
アロハ「普通なら、ああいう演出はしないですよね」
もんや「…っていうかできない。
余貴美子さんの看護師役なんて、
相当に微妙で難しい役柄に設定している」
アロハ「監督自身この作品は、ゆれるで大成功を収めて、
周りから過度な期待を受けていたことに
対しての答えって言ってます」
もんや「期待に応えるってことは、演じるってこと。
そこを突き詰めると、ほんとうの
自分じゃないところも見せてしまう。
その思いを登場人物に投影させたと…」
アロハ「そうです…あと今回は“灯り”…この演出方法が秀逸です。
鶴瓶演じる伊野医師が持っていたオヤジのペンライト…
夜になると電灯ひとつない真っ暗な村の風景の中で、
微かに輝くスーパーカブのライト…
ここに彼女の繊細なこだわりが…」
もんや「さすが、お勧め。気合いはいってますね。
…で、その灯りは、なにを表現したかったのかな?」
アロハ「人のよりどころ…を表現していた
ペンライトは息子のよりどころであり、
カブのライトは、村人のよりどころ。」
もんや「なるほど。よりどころ…といえば
一番は八千草薫演じる、かづ子さんが伊野医師のよりどころ…
なんでしたかね?…だからあのラスト?」
アロハ「その通り」
もんや「僕は、あのラストは違和感あったんですけど」
アロハ「人間の不可解さがテーマですからね。あれでよかったんですよ」
もんや「いいんですか 3位で(笑)?」
アロハ「はい」
■■ 3位 「ディア・ドクター」 ■■
もんや「では この会の順位つけは ここまでで。
ほかに挙げた作品でのお勧めコメント…まあ、
全部観て欲しいけど、あえてひとこと言いたい放題で」
アロハ「“南極料理人”…男子寮のようなふじドーム基地で
くりひろげられる汗臭い南極生活。
見所はラーメンから伊勢エビまで、
バリエーション豊富な料理の数々
あと、パンチラ盗撮、破廉恥、お下品満載ながらも、
溢れんばかりの愛を感じさせてくれた、“愛のむきだし”…
家族の崩壊と再生の物語、“あの日、欲望の大地で”
これは、なにせ衝撃のラスト!!
シャーリーズセロンが、冒頭から裸!
…彼女の過去がラップしての展開。
ありきたりな不倫話しをここまで引きこませるのは
大したもんです。」
もんや「全部観ろ!ですが…
伊坂幸太郎原作の“フィッシュストーリィー”。
映画化としては、“アヒルと鴨のコインロッカー”に並ぶ、
お気に入り作品です。
今年は、重力ピエロとラッシュライフは、観なくて良いので、
こっち観て欲しい。
来年のゴールデンスランバーが楽しみです。
ハリウッド系では、“スタートレック”。
…バットマンや007シリーズと同様に、
やっとリメイク重ねてよくなった。面白かったです。
そして“ハルフウェイ”…北乃きい…おそるべし演技です」
もんや「ありがとうございました。
このお互いのランキングは、厳選のお勧め作品ですから…
このまま続けると夜が明けてしまう(笑)
…来年もやりましょうね」
アロハ「ぜひ。呼んでください」
“アロハ坊主さんと、今年の映画を語る”
今日は、わざわざ戸塚までお越しいただきありがとうございます。
さて、早速ですが、今年公開された映画、
全般についてどんな感想をお持ちですか?
アロハ
「全般的に、今年は面白い作品が少ない年でしたね。
あとは、これは、面白い作品と思える作品と、
そうでない“駄作”(笑)との差が激しかったような…
もんやさんはいかがですか?」
もん
「同感ですね。特に、大作ハリウッドものが…ひどい。
でも、そんな中、やはり これは観てほしいという
作品を紹介したいと思います」
…… まずは、お互いの今年のベスト5の発表から
もん
1位:「サマーウォーズ」
2位:「母なる証明」
3位:「グッド・バッド・ウィアード」
4位:「フィッシュストーリィー」
5位:「スタートレック」
6位:「カールじいさんの空飛ぶ家」
7位:「レスラー」
8位:「ディア・ドクター」
9位:「愛のむきだし」
10位:「ハルフウエイ」
2位:「母なる証明」
3位:「グッド・バッド・ウィアード」
4位:「フィッシュストーリィー」
5位:「スタートレック」
6位:「カールじいさんの空飛ぶ家」
7位:「レスラー」
8位:「ディア・ドクター」
9位:「愛のむきだし」
10位:「ハルフウエイ」
アロハ
1位:「サマーウォーズ」
2位:「ディアー・ドクター」
3位:「南極料理人」
4位:「母なる証明」
5位:「精神(ドキュメンタリー)」
6位:「あの日、欲望の大地で」
7位:「愛のむきだし」
8位:「グラントリノ」
9位:「ラースと、その彼女」
10位:「3時10分 決断の時」
2位:「ディアー・ドクター」
3位:「南極料理人」
4位:「母なる証明」
5位:「精神(ドキュメンタリー)」
6位:「あの日、欲望の大地で」
7位:「愛のむきだし」
8位:「グラントリノ」
9位:「ラースと、その彼女」
10位:「3時10分 決断の時」
もん「…なるほど、事前に打ち合わせなしの割には、何作品か。
かぶってますね。実は正直、この企画の前に、
まったくかぶらないんじゃないかと、思ってたんです…」
アロハ「それは、なぜですか?…僕は、先に言ったように…
今年は落差が激しいってところ、おんなじ感想だから、
選ぶとなるとかぶらざる負えないかな…と」
もん「そうですね。その面白い感覚って、人それぞれで、
それを言ったら同じなんだけど まあそれでいいわけで。
…でも、それでも、やっぱり観ておくべき、
面白いものというものは絶対にあって、
その面白いものを見分ける力もあると思うのです。
その意味では、お互い、その力はあるということで(笑)」
アロハ「…でなけりゃ、年末にこんな
愚にもつかない対談しませんよね。
自画自賛ぽいですけど」
もん「ただ、お互い、今年の全部を観ていない。
だから漏れてるかもしれませんし、厳密に順位というのは、
つけられないもんだから、
そこんところは、大目に見ていただくということで…
でも、せっかくですからこの場、2人のお勧めということで、
決められたらベスト3くらいきめましょ。」
アロハ「確かに… それでお願いします」
もんや「まず1位…ははは お互い相当観ているのに…
見事に…おんなじですね」
アロハ「おなじですねえ… この作品は気持ちエグラレましたね。
これがオリジナル脚本というのはもうすごいですね。」
もんや「時をかける少女…で資金が集まったそうですからね」
アロハ「田舎のお盆休みとバーチャルな世界
この対比の着想がすごいし、老若男女が楽しめる
物語に仕上げているところがすごい」
もんや「僕、この映画の感想を人に話す時に…
泣いちゃってんですよね。ぼろぼろ。」
アロハ「どのあたりで」
もんや「…隠し子、侘助が、ばあちゃん訃報聞いて、
戻るところ…あそこ!…あそこはやばい!」
アロハ「僕は、なんと言っても、少し内気な理科系男子の、
小磯健二クン。よそ者の彼が、最後まで奮闘する、
そこに共感した。侘助クンもそうですが、
いまの若者のキーワードは“疎外感”だと思うんですよ。
そういうと、ネガティブな形容詞ですけど、
その疎外感も時と場合によっては、
生きるエネルギーに変えられるってことが伝わってくる」
もんや「ばあちゃんの愛?」
アロハ「そうそう」
もんや「じゃあもうこれは、もうお互い大絶賛ですから。
文句なく今年の1位でよろしいいですかね?」
アロハ「そうですね」
■■ 1位 「サマーウォーズ」 ■■
もんや「2位は かぶってますけど、
順位が違う… 点数化してみると…次が、母なる証明」
もんや「ポン・ジュノ監督大好き。
待望の新作で、楽しみにしていました。
やっぱり、ただものじゃない」
アロハ「世の中の倫理観とか、無視して、自分の信じる道、
進む主人公…好きなんですよね」
もんや「…母の愛…ですね」
アロハ「今回は、そうですね」
もんや「ラスト前の草原のダンス…どう見ますか?」
アロハ「…あれは、監督の観客への挑戦ですね。
だから、冒頭にも印象的に使ったんでしょうね。」
もんや「…演出ですよね。バスの中で最後…乗客に合せて踊りだす
あのシーンとは、ニュアンスが、違いますよね。
原題はMATHERだけ。
そこの邦題は“証明”をつけた。センスあるなあ」
アロハ「キム・ヘジャとウォンビン…役者としては両方すごい。
ちょっと意地悪な質問ですが、
あえてどちらの演技がよかったですか」
もんや「それは もう ウォンビンです」
アロハ「なぜですか?」
もんや「母の演技は極論言えば、ほかにできる
韓国女優がいると思います。
でも、あの精神薄弱さの演技は、
できそうで誰にもできないところを感じました」
アロハ「少年の無邪気さの怖さ」
もんや「日本の俳優も見習ってほしい(笑)」
アロハ「では、第2位で」
■■ 2位 「母なる証明」 ■■
もんや「次は、ディア・ドクター。アロハさんが進める根拠は?」
アロハ「もんやさんにとって、ポン・ジュノが
タダものじゃないように、
僕にとっては西川美和監督がタダものじゃない」
もんや「蛇イチゴ ゆれる … 西川監督、進化してますか?」
アロハ「してますね。全体的に、人間って不可解…
てところの描き方がより深かったです」
もんや「問題はラスト。ここは触れずにおけないですね」
アロハ「その前に…いいですか。
僕どうしてもいいたいんですが、
“人間って不可解”ってことが、
登場人物すべての設定に表れていました」
もんや「みんなひと癖ある。特に後半の事情聴取…
あの辺りの描き方はタダものじゃない」
アロハ「普通なら、ああいう演出はしないですよね」
もんや「…っていうかできない。
余貴美子さんの看護師役なんて、
相当に微妙で難しい役柄に設定している」
アロハ「監督自身この作品は、ゆれるで大成功を収めて、
周りから過度な期待を受けていたことに
対しての答えって言ってます」
もんや「期待に応えるってことは、演じるってこと。
そこを突き詰めると、ほんとうの
自分じゃないところも見せてしまう。
その思いを登場人物に投影させたと…」
アロハ「そうです…あと今回は“灯り”…この演出方法が秀逸です。
鶴瓶演じる伊野医師が持っていたオヤジのペンライト…
夜になると電灯ひとつない真っ暗な村の風景の中で、
微かに輝くスーパーカブのライト…
ここに彼女の繊細なこだわりが…」
もんや「さすが、お勧め。気合いはいってますね。
…で、その灯りは、なにを表現したかったのかな?」
アロハ「人のよりどころ…を表現していた
ペンライトは息子のよりどころであり、
カブのライトは、村人のよりどころ。」
もんや「なるほど。よりどころ…といえば
一番は八千草薫演じる、かづ子さんが伊野医師のよりどころ…
なんでしたかね?…だからあのラスト?」
アロハ「その通り」
もんや「僕は、あのラストは違和感あったんですけど」
アロハ「人間の不可解さがテーマですからね。あれでよかったんですよ」
もんや「いいんですか 3位で(笑)?」
アロハ「はい」
■■ 3位 「ディア・ドクター」 ■■
もんや「では この会の順位つけは ここまでで。
ほかに挙げた作品でのお勧めコメント…まあ、
全部観て欲しいけど、あえてひとこと言いたい放題で」
アロハ「“南極料理人”…男子寮のようなふじドーム基地で
くりひろげられる汗臭い南極生活。
見所はラーメンから伊勢エビまで、
バリエーション豊富な料理の数々
あと、パンチラ盗撮、破廉恥、お下品満載ながらも、
溢れんばかりの愛を感じさせてくれた、“愛のむきだし”…
家族の崩壊と再生の物語、“あの日、欲望の大地で”
これは、なにせ衝撃のラスト!!
シャーリーズセロンが、冒頭から裸!
…彼女の過去がラップしての展開。
ありきたりな不倫話しをここまで引きこませるのは
大したもんです。」
もんや「全部観ろ!ですが…
伊坂幸太郎原作の“フィッシュストーリィー”。
映画化としては、“アヒルと鴨のコインロッカー”に並ぶ、
お気に入り作品です。
今年は、重力ピエロとラッシュライフは、観なくて良いので、
こっち観て欲しい。
来年のゴールデンスランバーが楽しみです。
ハリウッド系では、“スタートレック”。
…バットマンや007シリーズと同様に、
やっとリメイク重ねてよくなった。面白かったです。
そして“ハルフウェイ”…北乃きい…おそるべし演技です」
もんや「ありがとうございました。
このお互いのランキングは、厳選のお勧め作品ですから…
このまま続けると夜が明けてしまう(笑)
…来年もやりましょうね」
アロハ「ぜひ。呼んでください」
復活!ブログ
投稿日時:2009/12/02(水) 01:05後輩のT君に言われた。
僕は「ほぼ日刊イトイ新聞と高城剛と
もんやさんのブログに影響を受けてます」
すっかり生姜好きな伝説のコピーライターと、
ハイパーなエリカとリミックスしている
謎のおっさんから受ける大いなる影響と、
僕からのそれとは著しく違うのだろうけれど…
それでもこう言われると、
たまには、後輩の為になることでも書かなければと思う。
先週、インドの首相夫妻が訪米し、
オバマ夫妻が盛大な歓迎の宴を催した。
CNNでは、そのパーティーに招かれた招待客は誰それだの、
宴の食事には何がでた…だの
そんなことをずっと放送していた。
日本の首相の訪米とは、えらい違いだ。
ちょうど、サンクスギビング前で、
気が抜けていたのかもしれない。
サンクスギビング=感謝祭は日本ではあまり知られていないが、
毎年11月の第4週の木曜日…この日から週末まで、
アメリカは、ある意味、お休みとなる。
日本のお正月に近い感じです。
由来は、遥か昔、イギリスから北米に移住した人たちが、
冬の寒さで飢え死にしそうになった時に、アメリカの先住民達に
助けられたことを感謝する日として始まったそうで、
今年の実りに感謝というニュアンスもあり、
日本の勤労感謝の日みたいな感じでもあります。
もうひとつ、この期間は、アメリカの景気の動向を知る上でも
重要な意味を持っています。
米国のGDPの70%は個人消費であります。
小売りに限れば、1月~10月は赤字でも
11月、12月で黒字にして帳尻を合せるのが常で、
実に全体の4割をこの2カ月で売り上げるそうです。
その皮切りが、サンクスギビングの金曜日…
ブラックフライデーと言います。
ブラックと言えば…??
と思うかもしれませんが、
ここでの意味は“黒字”という意味。
金曜日の深夜〇時から、小売り業界は一斉に
派手なディスカウントセールをはじめるそうで、
以前はそこに人々が殺到して、
死人が出る騒ぎまであったようです。
また最近は、サンクスギビングが明けた月曜日を、
サイバーマンデー と呼び、ネットでの売り買いが
一斉に始まる現象も起きているとのことです。
つまり、この時期の売上が、今、そして来年のアメリカの
景気動向を知る試金石でもあるわけです。
日本のように、なんだか不安だから
「買い物を控えましょう」「そうそう箪笥に貯金しましょう」
という発想がないわけではないでしょうが、
やはり、アメリカ人は使ってなんぼだから
使う体力があるか否かが、景気というわけです。
今のアメリカ国民の関心事は、
“アフガニスタン”と“ヘルスケアー”の問題です。
特に今まで医療保険の適用のなかった国民に、
国が援助しましょうというオバマの公約は、
「事業仕分け」しても微々たるもので、
そもそもマニフェスト守る財源が、
「ほら、やっぱりないじゃん」という
鳩山さんが立たされている現状に似ている。
共和党はここぞとばかりに批判する。
自民党はここぞとばかりに採決を欠席するのです。
…とここまで、きて、T君こんなことは、
どうでもいいのかも…と
不安になってきたので、話を変えます。
でも、せっかくアメリカの話をしたので、その延長で…
わが友人、MR:SHIN は北カリフォルニアに移り住んで12年。
もとは果樹園だった盆地が、スタンフォード大学の
卒業生が起業して成功する現象を受けて、
シリコンバレーと呼ばれ、黄金を求めて、
世界から人々が集まり、活況を呈してのち、
現在までの時間を投資を生業として、ここで過ごしている。
日本からも銀行をはじめ商社、VCなどなど
数多くのビジネスマンが在留したが、
一人消え、ふたり消え、ほんとうに力を持つものしか残っていない。
このシリコンバレー現象、
もともと、HPがパルアウトのガレージで始めたのが
発祥とされ、北のパルアウトから南のサンノゼまでの地域一帯を
この名称で呼ぶようになった。
いまではシリコン=半導体からNETビジネスへと転換していて、
グーグルやアップル、インテルやヤフー、
シアトルのマイクロソフト以外の関連企業は
みなここに拠点を構えている。
彼は、この12年を振り返り、
「結局、ディールの成否は人が勝負。
ことさら技術に詳しい理系人間である必要もなく、
要するにビジネスの先を見るイマジネーションが
あるか否かだと思います」
「日本人でありながら、
このラテンの性格が功を奏したんですかね(笑)
あっちの人間に、おまえはネイティブでもないのに、
説得力がありすぎるって(笑)
…なんだかつらの皮は厚くなりましたよ」
いやいや性格だけではないでしょう。
相当に苦労したのでしょうが、
彼のよいところは、そういうしみったれた泣き言を言わないこと、
加えて、仕事を楽しめる才能を持っていることだと思います。
過去、4年間で○○○億の利益を会社にもたらし、
そのすべての経過が彼の経験となっている、
あちらに在留している日本人で、
本当の意味でこういう経験ができた人は
ほとんどいないのだろうと思う。
重ねて聞くとこんなことも…
「アメリカに行って、はじめて自然体でいられる。
自分の弱虫な部分を、みんなそれでいいじゃんと認めてくれる。
日本にいるときは、秀才の“ふり”をしていたけれど、
あっちではそういうことがくだらないと思えるようになった」
“ふり”というのは、嘘をついているということだからね、
…なかなかに耳が痛い。
コンピュータサイエンスはプログラミングありき、
その意味ではアメリカ人は向かず、
だから、中国人をはじめ、移民であるアジア人が活躍している。
インドの首相が三顧の礼でもてはやされるのは、
その自国のマーケットはもちろん、
エンジニアリングの人手であるということも関係があると思う。
「トヨタ ソニーは ソフトウエアーの世界では生き残れない」
とSHIN。
「だって、プログラムの不具合は必要悪…バグでてもいいじゃん!
つぶしてゆきましょ!」
そういう発想は真面目な日本人にはできないでしょ、ということ。
IBMまでは違ったのですが、バージョンという概念を取り入れた
マイクロスフトから、ビジネスのあり方が大きく変わったらしい。
僕も、どちらかというと いいじゃん!
の性格なので、すぐにでも暮らせそうと思うが、
プログラミングのプの字もわからないので残念であります。
最後にSHINをご存じの方に 彼のプライベートを少しご紹介。
ロスガトスという閑静でこじんまりとした上品な街並みが気に入り、
近くのサンノゼに奥さんと3人の子供に囲まれての生活。
もともと奥さんとの出会いは「メアリィー・J・ブリッジ」の
コンサートのチケットをネットで売りに出した奥さんに、
彼がコンタクトを取ったことが始まりらしいです。
奥さん曰く 「山本小鉄の“それでもプロレスの味方…”
を知っていたり、We AreThe Worldの全員の名前が言えたり…、
なまこ好きな私のために、こっちでなまこが食べられる
レストラン探してくれたり…」
「とにかくいろいろ物知りなうえに、
私にもわかるように解説してくれる」
「カリフォルニアに来て1カ月くらいで知り合ったのですが、
ああ ここにほっとする日本人がいた…って感じでした」
長女のハナは地元の小学校に通い
(土曜日には日本語の補習校にも通う)、
2歳になる妹のサラは、ママ大好きで、
手のかかる盛り、加えて、生後7か月のルーク…と
夫婦の日常は、なかなかに騒がしいようですが、
この先、子供たちが成長するに従い、
向こうでの生活も変わってきて、それもまた楽しい…
そう思えるご夫婦でしょうから安心です。
月に1度くらいは日本に来られるので
またお会いできる日を楽しみに僕はしています。
僕は「ほぼ日刊イトイ新聞と高城剛と
もんやさんのブログに影響を受けてます」
すっかり生姜好きな伝説のコピーライターと、
ハイパーなエリカとリミックスしている
謎のおっさんから受ける大いなる影響と、
僕からのそれとは著しく違うのだろうけれど…
それでもこう言われると、
たまには、後輩の為になることでも書かなければと思う。
先週、インドの首相夫妻が訪米し、
オバマ夫妻が盛大な歓迎の宴を催した。
CNNでは、そのパーティーに招かれた招待客は誰それだの、
宴の食事には何がでた…だの
そんなことをずっと放送していた。
日本の首相の訪米とは、えらい違いだ。
ちょうど、サンクスギビング前で、
気が抜けていたのかもしれない。
サンクスギビング=感謝祭は日本ではあまり知られていないが、
毎年11月の第4週の木曜日…この日から週末まで、
アメリカは、ある意味、お休みとなる。
日本のお正月に近い感じです。
由来は、遥か昔、イギリスから北米に移住した人たちが、
冬の寒さで飢え死にしそうになった時に、アメリカの先住民達に
助けられたことを感謝する日として始まったそうで、
今年の実りに感謝というニュアンスもあり、
日本の勤労感謝の日みたいな感じでもあります。
もうひとつ、この期間は、アメリカの景気の動向を知る上でも
重要な意味を持っています。
米国のGDPの70%は個人消費であります。
小売りに限れば、1月~10月は赤字でも
11月、12月で黒字にして帳尻を合せるのが常で、
実に全体の4割をこの2カ月で売り上げるそうです。
その皮切りが、サンクスギビングの金曜日…
ブラックフライデーと言います。
ブラックと言えば…??
と思うかもしれませんが、
ここでの意味は“黒字”という意味。
金曜日の深夜〇時から、小売り業界は一斉に
派手なディスカウントセールをはじめるそうで、
以前はそこに人々が殺到して、
死人が出る騒ぎまであったようです。
また最近は、サンクスギビングが明けた月曜日を、
サイバーマンデー と呼び、ネットでの売り買いが
一斉に始まる現象も起きているとのことです。
つまり、この時期の売上が、今、そして来年のアメリカの
景気動向を知る試金石でもあるわけです。
日本のように、なんだか不安だから
「買い物を控えましょう」「そうそう箪笥に貯金しましょう」
という発想がないわけではないでしょうが、
やはり、アメリカ人は使ってなんぼだから
使う体力があるか否かが、景気というわけです。
今のアメリカ国民の関心事は、
“アフガニスタン”と“ヘルスケアー”の問題です。
特に今まで医療保険の適用のなかった国民に、
国が援助しましょうというオバマの公約は、
「事業仕分け」しても微々たるもので、
そもそもマニフェスト守る財源が、
「ほら、やっぱりないじゃん」という
鳩山さんが立たされている現状に似ている。
共和党はここぞとばかりに批判する。
自民党はここぞとばかりに採決を欠席するのです。
…とここまで、きて、T君こんなことは、
どうでもいいのかも…と
不安になってきたので、話を変えます。
でも、せっかくアメリカの話をしたので、その延長で…
わが友人、MR:SHIN は北カリフォルニアに移り住んで12年。
もとは果樹園だった盆地が、スタンフォード大学の
卒業生が起業して成功する現象を受けて、
シリコンバレーと呼ばれ、黄金を求めて、
世界から人々が集まり、活況を呈してのち、
現在までの時間を投資を生業として、ここで過ごしている。
日本からも銀行をはじめ商社、VCなどなど
数多くのビジネスマンが在留したが、
一人消え、ふたり消え、ほんとうに力を持つものしか残っていない。
このシリコンバレー現象、
もともと、HPがパルアウトのガレージで始めたのが
発祥とされ、北のパルアウトから南のサンノゼまでの地域一帯を
この名称で呼ぶようになった。
いまではシリコン=半導体からNETビジネスへと転換していて、
グーグルやアップル、インテルやヤフー、
シアトルのマイクロソフト以外の関連企業は
みなここに拠点を構えている。
彼は、この12年を振り返り、
「結局、ディールの成否は人が勝負。
ことさら技術に詳しい理系人間である必要もなく、
要するにビジネスの先を見るイマジネーションが
あるか否かだと思います」
「日本人でありながら、
このラテンの性格が功を奏したんですかね(笑)
あっちの人間に、おまえはネイティブでもないのに、
説得力がありすぎるって(笑)
…なんだかつらの皮は厚くなりましたよ」
いやいや性格だけではないでしょう。
相当に苦労したのでしょうが、
彼のよいところは、そういうしみったれた泣き言を言わないこと、
加えて、仕事を楽しめる才能を持っていることだと思います。
過去、4年間で○○○億の利益を会社にもたらし、
そのすべての経過が彼の経験となっている、
あちらに在留している日本人で、
本当の意味でこういう経験ができた人は
ほとんどいないのだろうと思う。
重ねて聞くとこんなことも…
「アメリカに行って、はじめて自然体でいられる。
自分の弱虫な部分を、みんなそれでいいじゃんと認めてくれる。
日本にいるときは、秀才の“ふり”をしていたけれど、
あっちではそういうことがくだらないと思えるようになった」
“ふり”というのは、嘘をついているということだからね、
…なかなかに耳が痛い。
コンピュータサイエンスはプログラミングありき、
その意味ではアメリカ人は向かず、
だから、中国人をはじめ、移民であるアジア人が活躍している。
インドの首相が三顧の礼でもてはやされるのは、
その自国のマーケットはもちろん、
エンジニアリングの人手であるということも関係があると思う。
「トヨタ ソニーは ソフトウエアーの世界では生き残れない」
とSHIN。
「だって、プログラムの不具合は必要悪…バグでてもいいじゃん!
つぶしてゆきましょ!」
そういう発想は真面目な日本人にはできないでしょ、ということ。
IBMまでは違ったのですが、バージョンという概念を取り入れた
マイクロスフトから、ビジネスのあり方が大きく変わったらしい。
僕も、どちらかというと いいじゃん!
の性格なので、すぐにでも暮らせそうと思うが、
プログラミングのプの字もわからないので残念であります。
最後にSHINをご存じの方に 彼のプライベートを少しご紹介。
ロスガトスという閑静でこじんまりとした上品な街並みが気に入り、
近くのサンノゼに奥さんと3人の子供に囲まれての生活。
もともと奥さんとの出会いは「メアリィー・J・ブリッジ」の
コンサートのチケットをネットで売りに出した奥さんに、
彼がコンタクトを取ったことが始まりらしいです。
奥さん曰く 「山本小鉄の“それでもプロレスの味方…”
を知っていたり、We AreThe Worldの全員の名前が言えたり…、
なまこ好きな私のために、こっちでなまこが食べられる
レストラン探してくれたり…」
「とにかくいろいろ物知りなうえに、
私にもわかるように解説してくれる」
「カリフォルニアに来て1カ月くらいで知り合ったのですが、
ああ ここにほっとする日本人がいた…って感じでした」
長女のハナは地元の小学校に通い
(土曜日には日本語の補習校にも通う)、
2歳になる妹のサラは、ママ大好きで、
手のかかる盛り、加えて、生後7か月のルーク…と
夫婦の日常は、なかなかに騒がしいようですが、
この先、子供たちが成長するに従い、
向こうでの生活も変わってきて、それもまた楽しい…
そう思えるご夫婦でしょうから安心です。
月に1度くらいは日本に来られるので
またお会いできる日を楽しみに僕はしています。
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