紋谷のソコヂカラ 2011/1/6

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年の頭に 年末の噺

投稿日時:2011/01/06(木) 18:12

知り合いにしっちゅう風邪をひいている男がいる。

久しぶりに話すと
「いやあ~風邪ひいちゃって」と
いつも言っている。

「いやあ 下の子が 小学校でもらってきて
    …上の子にうつって そのうちにかみさんも熱出しちゃって、
   それで、みんな治ったと思ったら 今度は ボクが… 
   39℃あるんですよ まいったなぁ」

いつも このパターン 

「小学生の風邪って キミはどこまで免疫力ないんだい?
 だいたい40歳過ぎたら高熱なんてあんまり出るもんじゃないよ。
   どこまで、虚弱なの?」

何度、こう言ったことか…

そもそも風邪なんて 暇なやつか 
気が緩んでいるやつが かかるもんで、
日々、忙しく緊張感のある人間には
寄ってこないものだ

かかりそうだの気配がしたら 

寝る 

市販の薬は飲まない 

風邪っぽくても風邪なんだと思わない 

思ったら負け 

古典的だが病は気からである。 

熱がある感じがするのは気がせい 
体温計は持たない 
熱があがったこと確認しても意味ないから…

ああ~やっぱり 9度もあるぅ~ 熱があるぅ~ 

そんなんで自分を追い込まない 
超熱燗飲む 熱い風呂に入るやいなや
布団をぐるぐる巻きにして 
頭に凍ったタオル 

寝る 
ひたすら寝る

~ ほら やっぱり もうだいじょうぶ 気のせいだった 
…こうやって乗り越えてきた

それは 風邪ひいてんじゃん!? 
…いやいや ちょっと弱っていただけ 
…風邪じゃない

風邪引いた …って 
自らそう言うのがもう逃げてる 
なんだか人生の免罪符みたいで潔くない


…… !! ……


12月24日 
世の中が浮かれている夜に調子が悪くなった

まず食欲がない このボクが食欲がない 

…? これはおかしい

頭ががんがんしてきた 咳がとまらない 
「恋と咳は止まらない」と言うが、
ぜんぜん止まらない

熱は…体温計がないのでわからない…が
額でお茶が湧きそうな感じ

いちばんひどいのは 体の節々が“攣る(つる)”のです 
脇腹 肩 旨 手足 
もうところかまわず 激痛とともに攣りまくる

これは なんだ?? 

とにかく 超熱燗 ~ 熱い風呂コースと思うのだが、 
体がお酒を受け付けない
風呂もなんだか 無謀にしか思えない

そのまま 布団にくるまり 
嵐の治まるのを待つしかない 
2日そのまま 
なにも食べずひたすら 寝ていた。

…それでも いっこうに回復の兆しがないので、
ネットで近所の内科を調べて ゲンチャリで向かう

「インフルエンザですね はいA型 だね。
 A型は辛いよね。 体温計は持っていた方がいいよ。
 熱の上がり下がりは重要で、それで、病気がわかるからね。
 …いまはよいクスリがあるから大丈夫。
 それと抗生物質と咳止め 胃の粘膜も保護しときましょ
 はい 5日分 …帰りは向こうの出口からね
 待合室の患者さんにうつしちゃいけないからね。
 …処方箋持って ここの薬局にね 
 …電話入れておくから そこでも外に持ってきてもらってね
 人と接しちゃだめだよ 今日から4,5日は保菌者だからね
 はい お大事に」


訂正:「風邪はかかる時はかかる 気の緩みも 忙しさも 関係ない
    そいつは突然やってくる 気合いでは直せない 
    人生の免罪符なんてとんでもない 逃げているなんて 
    まったくの誤解でした ここに訂正してお詫びします 
    体温計 もちろん これから常備します はい。」

◆◆◆

インフル襲来の5日前

下町に住む友人夫婦が 
クリスマスのイベントを行うと言うので 
顔を出してきました

もともと工場(倉庫?)を改築して 
イベントスペースをしつらえ、
そこでいろいろ発信しようとしているご夫婦

もとから知り合いの旦那さんは デザイナー 
奥さまは ヨガも教え モダンダンスもご達者
そこに、フルート奏者とアコギのユニットを加えた創作舞台

1部は 聞きなれたクリスマスソングを 
フルートとアコギで奏でてゆく 静かな時間



小さい舞台は 淡い間接照明と 
蝋燭(廃油で作ったオリジナル)の灯り 
観客は30名みんな床に体育座り 

途中休憩をはさみ2部は 
クリスマスにちなんだ朗読や 
修道女に扮した奥さんの踊り 

そして、メインは 
世界の民族音楽やフルート奏者のオリジナル曲に合わせ 
一面の白い壁に 友人が即興でイラストを書いてゆく 
世界のさまざまな国の人がクリスマスを楽しんでいるイラスト 

ご夫婦は この下町のみなさんも巻き込んで 
地域を活性してゆきたい思いもあり始めているイベント
…ゆえに 観客には ご近所さんも多い

1時間と少し 楽しめました 
終わって 飲んでいると 
自然に こうしたらよいとか 
こんどはああしたいとか
…そういう時間も含めて
とても楽しかった 

感じたのは 

「こういう舞台と与えられたら
 じぶんなら なにを発信する
 …発信できるのか
 …したいのか」ということ

同じく観ていた 後輩に問うと、

「わたしは …とくに ないんですよね
 世間に言いたいこと うーん なんだか 
 毎日 仕事していればそれでいいっていうか
 …改めてなにかを表現したい…って 
 とくに ない」

まことに正直な感想で 笑えた 

翻って自分は どうなのか

押しつけでなく 説教くさくなく 
楽しんでもらえるもの… 
自己満足からでもよいから

同じく 観ていた友人は

「もんやさんは 説教がいいんじゃないんですか
 みんなに説教する そういうの」

説教か …やっぱり(笑) 

BACK はゴスペルですね そうなると


◆◆◆

インフル襲来の直前23日

「立川談志の 近年の傑作と言われた
 2つの噺を 映像での上映会 」

2つの噺というのは 

「文七元結」と「芝浜」

実はこの日 
夜の部では実際に談志が 
芝浜を生で聴かせるライブショーがあって 
そちらは当然 完売

完売だからの言い訳でもなく、
また 落語はナマで…が当たり前
ということも承知の助なのですが、

僕はあえて、このふたつの噺が 
いかに素晴らしかったのかを味わいたかった。

たとえば「芝浜」は2007
おなじよみうりホールで演じた 
ご本人が「神が降りた」と評した伝説の独演

こういうモノは、
同じ芝浜だから よいのではなく 
たとえご本人が生で
目の前でいま噺して聴かせてくれたとしても
それは、あくまで今の「芝浜」でしかなくて、
 
同じ噺だから なんでもよい
というものではないところがよいのです。

落語家には 

「笑える落語家」と
「聞かせる落語家」がいて 

いまでしたら、前者は 
柳家小三治 春風亭昇太 あたりであるのに対して、
後者は 圧倒的に立川一門であります。

志の輔や談春などは 笑いももちろん “取りにくる” のですが、
頭から笑いを取りにくるのではなく、

「笑わせようとすれば、できちゃうんだけど、
 ここは泣かせるね」って
達人の余裕があるのです。

だから、ゲラゲラ とにかく笑いたい派は 
そういう噺家さんを 

人情噺の深みにはまりたい方は 
そういう噺家さんを選んで聴かれるとよいです。

「文七元結」も「芝浜」も古典も古典 
もう わかりやすい 噺です。

「あん時の芝浜が最高だった」などと自画自賛って、
そもそも古典古臭いじゃんと文句ばかり垂れていた 
異端児の談志が この歳になり 癌を患い また生きて
 
それでも 「ありがちな古典にゃしねえよ」
の気構えを全身にみなぎらせてやってくれる 
そこのところの「芝浜」が よいのです。

堀井憲一郎さん曰く 
「立川一門は おそらく落語をいちど体の中に通す 
その上で言葉をすべて自分のモノに変えて喋る 
そこが刺さるか否かの分かれ目なのかもしれない」と 
言っていました。

が、そういう修練はどの噺家さんもやっていて、
格別立川一門が特別ということはないのでしょうが、
やはり、そこは談志のチカラ 
としか言いようがありませんね。

「文七元結」 
五十両落として死のうとする男を 
欄干でどう止めるか 
…こういうシーンでは 話しながら談志は

「うーん ここがおかしいんだよなああ~ 
 こういう風に手を差し伸べるのは無理がある 
 こうじゃない こうじゃなくちゃ ならねえなあ~」

なんて 話しながら演じながら 
自分でダメ出しをする 

そういう 興ざめになるような 
楽屋でしなさいよ的なことをはさんでも 
全体的にだらけないのです 

むしろ味が生まれる。

そういう作りものの噺なのに 
それでよしと 流せばよいのに 
話しながら 自分で修正するなんて
禁じ手を出してくる。

「どこまでいっても 作りもん だからね」 

こういう斜に構えながら 内実、
どんどん引き込んでゆく手腕は、
さすがに本物の芸と 久しぶりに熱くなりました。 

映像の上映でこうなのですから 
ナマではどれほどのものだったのか…

「芝浜」はラストを変えてしまったと聞いていましたが 
実際そんなことはなく、ラスト前のつなぎのところを
大きくいじってはいて、そのいじりのせいで 
ラストがより際立ったという内容でした。 

満足。

えっ? どんな噺かって…? 

どうしようもない 
のんべえ親父の噺ですよ 

両方とも。

ちなみにDVDで発売されていますから 
だまされたと思わなくて…
味わってみましょう 
こういうものを。



フォルム上映のみ 本人の出演はなし 

…そういう触れ込みでしたが 
合間にご本人お顔をだしてくれたのは 
嬉しかった。

むずむずされたのでしょう おそらく。

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