紋谷のソコヂカラ 2009/8

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とにかく黙って、観るべし 読むべし

投稿日時:2009/08/19(水) 21:44

8月17日 月曜日 
…お盆休みが終わったのと同時に
…風が変わりました。
 
日差しは、まだまだ夏の勢いがあるのに、
蝉もじゃんじゃん鳴いているのに…
感じる風が涼しくなってしまった。
 
季節の変わり目の中で、僕は、
この瞬間がいちばん悲しい。
他の季節は、なんとなく終わり、
なんとなくそれなりに、
次の季節がやってくる感じなのに、
夏の終わりは、わかりやすく訪れる。
 
そこがまたなんとも悲しい。
 
そのうちに、秋の気配が色濃くなってきました
…なんて言い始めるのだろうが、
 
この風の変わり目を感じると、もう、
僕の気持ちは充分、秋となってしまいます。
 
これから年末大晦日までの季節は、
嫌いではないのですが、
また1年も夏を待たなければ
ならないと思うと、どうにも悲しい。
 
いっそのこと歳が改まったら、
梅雨に入り、2月からまた夏になればと思う。
 
そもそも、正月から3月までは、
どうにも白っちゃけていて、盛り上がりに欠けるし、
春…と持てはやすが、自然界はまだ寝ている最中に、
狂い花「桜」で強引に盛り上げても
それほどの感慨はないのではないか。
 
どうしても というなら 
桜は 元旦あたりで ばあっ!! と
おめでたく咲いてもらってもいい。
 
とにかく 桜が散ったら すぐ梅雨で… また夏
…とならないものか。
 
こんなくだらないことを真剣に考えるほど、
この風の変わり目は悲しい。

休みが終わり、会社に行きたくないなあ…と思って、
行き始めると…それはそれでまた変らぬ日常。
 
…で また週末。 

そんな週末は、お出かけしないでご自宅で楽しみませんか。
 
 
◆◆◆
 
「故郷の香り」 

という中国映画 



 
中国現代文学の巨人…莫言(モォ・イェン)の原作とか、
「山の郵便配達」のフォ・ジェンチィが監督…とか、
まあそういう注釈を書けばキリがあるいませんが、
そんなことは、ネットで適当に調べてください。
 
そんな注釈とは、関係なくこの映画は素晴らしい作品です。

僕は、見終わって、しばらくの間、ボーっとしてしまいました。
 
中国映画をアンディーラウやジェットリーや
金城 武だけだと思っているのは大きな間違いです。
 
最近の「ラストコーション」 や 「エグザイル/絆」 
なんかを観た人はもうご存知だと思いますが、
今の中国映画は、とてもいい感じです。
 
閉鎖状態が長かったせいで、表現の自由や技術レベルが、
韓国よりは遅れていましたが、
ここにきて、見事に進化されています。
 
ああ…そういう注釈はどうでもいいですね。
 
 
ある青年が、故郷に帰郷します。 
そこから物語りははじまります。

そんでもって、初恋の女性とすれ違います。
初恋の女性は、もう故郷の村で結婚していて、
女の子の母親でもあります。
 
その旦那が 香川照之…そうあの日本人俳優。
青年は、彼女の家を訪ねます。
 
香川扮する夫は言葉が喋れません。 
貧しい暮らしです。
 
そこまで見せて、映画は3人がまだ若かった頃
(といっても数年前)を描いてゆきます。
 
…細かく書いてしまうと申し訳ないし、
あの空気感を表すなんて無理なので止めます。
 
とにかく、ラストまで観て欲しい。 

絶対に損はありません。
 
◆◆◆
 
「悪い男」 

という韓国映画
 


これは、すごいです。 
 
キム・ギドクは、べネチュアに出した「受取人不明」から
評価を得た監督ですが、こちらは薦めません。
 
戦争の影と地方のあり方みたいなメッセージが中途半端で、
出来損ないのATG映画のような
陰湿な猥雑さが、まだ消化されていない感じ。

でもわずか1年で「ここまで進化するのか!」という
驚きの完成度が、この「悪い男」。
 
ヤクザな男がお嬢さんを見初めます。
お嬢さんを嵌めて、売春婦にしてしまいます。
その展開にびっくり。
 
女は、男を憎みます。
でも、それでも男は純愛です。
 
話の真ん中まで、男はひとことも喋りません
(ギドク作品にはこういうの多い・笑)
…でも、その理由がわかります 
ここでびっくり。
 
男は女を逃がします。
でも、女は戻ります。

なぜ?

…このあたりの心象描写と女優の演技はすごいです。
 

売春宿の小部屋 マジックミラー 雨の日の花の鉢植え… 
映像も素敵です。
 
人のいない海岸で、少しファンタジーな仕掛けが 
見る側を惑わせます…こういう仕掛けもお洒落。
 
この映画、日本の監督さんや脚本家なら、
「ここで終わりにするだろう」というシーンが2回あります。
 
でもギドクはそこでは 
…そこでも終わらせません。
 
ラスト…これまた 
なかなか 「悪い男」
 
ちょっと余談ですが、
 
最後の最後
走り去るトラックを空撮で引きで…の絵 
…エンドロールにつながる 
このセンスは そうとうに
お洒落です。
 
 
◆◆◆
 
 
「最も遠い銀河」 

白川道 小説
 

 
「1Q84」も「運命の人」も「鷺と雪」も「骸骨ビルの庭」も
…それぞれに楽しませてはいただきましたが、
いまひとつ消化不良でした。
 
そんな中、文句なしに 
今年のいまのところのNo1はこの作品。
 
主人公の幼少期や 過去のトラウマが 物語の軸をなす 
…こういう作品を 僕は「砂の器系」と呼んでいますが、
この「最も遠い銀河」もジャンルは砂器系。
 
作者 白川氏曰く 
「自分が面白いと思うことが、読者と合致しなければ止めるだけ」
「生活のために本は書かない」
 
さすが、もと犯罪人(笑)
 
しかし、ほんとうに面白いので恐れ入ってしまいます。
 
ストーリィーは才能にも容姿にも恵まれた建築士と 
小樽のリタイアした元刑事 
この2人の話が、テレコで展開します。
 
主人公はもちろん 脇に出てくる登場人物が 
みんな魅力的で…総がかりで
話を盛り上げてくれるもんだから 困ります(笑)
 
実は、途中から、このもと刑事のおっさん 
…どうしてここまで、この事件に執着するんだ…と
思えて仕方なかったのですが、

ラスト近くのあるシーン 
「500円玉のシーン」と呼びましょう 
このシーンの話の進め方で 
そんなフラストレーションも吹っ飛んでしまいました。
 
 
上下段で1000枚を優に超える文章量で 
この面白さ 

…ありがとうございました。
 

夏の不条理 

投稿日時:2009/08/10(月) 09:39



天候が、異常なせいなのか。
月が太陽を隠してしまったせいなのか…
ここのところ、 普通ではない出来事や、
有名人の唐突な訃報が、連日、報道され、
どうも なんというか 落ち着かない。
 
中学時代に カミューの異邦人を読んで 
主人公ムルソーの行動がさっぱり理解できないまま書いた
夏休みの読書感想文をなんとなく思い出した。
 
「太陽が まぶしい からって 他人を殺めていたら、
 夏は誰もいなくなってしまう 」
とかなんとか そういうことを書いた。
 
現国の鈴木光子先生は、

「不条理って 感じ わかる?」 と聞かれ、

「 そういうのは ごまかしなんではないか 」と答え、

笑われた思い出をなんとなく思い出した。
 
社会に出てから(ボクの場合は 東京に来てからの方が近いか)
さまざまな不条理と思われる出来事にぶつかるたびに…
すべてが 理のあるがままにあるわけではなく、 
なんだかわかんないけど 世の中は未完成なものだから、
いくら突き詰めても “それが正しい”ってことはないんだ
などと、納得した(つもり)で 生きてきて、 
この歳になっても、自分に言い訳するときに、
都合よくそう解釈している。
 
しかし 世の中 不条理で満ちている。
 
ノリピーの失踪に衝撃を受けた。
 
「マンモスラッピイ」
には、まったく同調できなかったが、
「うさぎって…寂しいと…死んじゃうんだよ…」 
この台詞は、おまえはウサギなのか!?…と
突っ込む隙を与えず、心に突き刺さり、
彼女の純粋で無垢なイメージは、
絶対普遍なものと僕の中では定着した。
 
ちなみに、ファンではない。
 
ファンではないが、「よいイメージのまま机にしまった」
そういう存在。
 
そういうようなことを、若い女性に話すと、
 
「…はあ?…あの娘は はじめから胡散臭い臭いが
 プンプンあったじゃない!気がつかなかったの?」
なんてことを言われた。
 
そうか?そうなのか?…おかしい 不条理だ… 
 
事件の真相は 暴かないでくれ 「藪の中に…」でいい。 
うさぎは白いままで…。
 
 

音楽業界では、最近、CD購入世代を見越して、
往年のバンドが、ぞくぞくと再結成をしている。
バンドに限らず、おっさんシンガーの活躍も然り…
往年のスターが 昔のご自身のヒット曲を 
今のお歳で歌われると…どうも落ち着かない。
 
声が違い…ノリが違い…サビなど、音程を落とし、歌われたりすると 
余計に違和感を感じ、やっぱり ボクは、あの時代の 
あの声が好きであって、今、歌われても 
逆にがっかりだなあ…と感じる。
 
そんな中、忌野清志郎さんを聴き直してみた。
 
「雨上がりの夜空に」と「OH! RADIO」 
 
テーマの変化、もちろんある。 
とんがったメッセージが、応援歌になっている…
そういう違いは抜きにして、
メロディーやリズムに限れば昔は昔、今は今で 
自分の最高のパフォーマンスに仕上げている感じがよくわかる。
時代を経てもかすれない力を感じるのです。
 
理由は、かんたん。
歌い続けているからなのでしょうが、
歌い続けることが出来ていることは即ち、
それだけ一線にいることができる力を維持していたということで、
その意味でもすごい人だなあ…と思う。
 
「こんな夜に発射できない…」 

ここにも不条理が これほどの不条理が…(笑)
 
大原麗子さんの、人生が報道されている。
天然のおおらかさ…わがままさ みたいなことを。

ボクが、芸能マネージャーとして
ある大御所の付き人をしていたのは…
もう25年ほど前の話し。
 
忘れもしない初仕事は、渋谷PARCO劇場の舞台でした。
 
門前仲町の稽古場での練習期間を終え、
ゲネプロ前から 渋谷入り…ちょうどいま頃の季節。
 
「カサノバ85’」 
暴君カサノバが、現代のニューヨークで復活したら…というお話し。
 
主演は 「おい!ちーぼー」の石立鉄男さん 
脇に川崎麻世君 西岡徳馬さん などなど
演出は福田陽一郎先生
 
わがボスは…東宝のニューフェイス 宝田 明 
 
同じ年の2月 「愚かな女」で夏目雅子さんと競演していて、
ボクはどうにもこうにも夏目雅子ファンでありましたから、
もう少し前に この仕事を始めていたらと…残念でたまりませんでした。
 
初日の幕が開き ほどなくしてのシーン 
主役の石立さんが …「オレは カサノバだあ~」と
立ち上がり 叫ぶシーン。
 
振り上げた手が 勢い余り…石立さんのカツラが客席に飛んでしまう…
そんなハプニングがケチのつけ始め。
 
この劇は、よせばよいのにミュージカル仕立て…
テレビでの活躍が多い石立さんは歌が苦手なのです。
 
舞台でのライブ音は、出番を待ち、準備しているほかの俳優さんの
楽屋のスピーカーから流れてきます。
 
舞台経験の長い、特に歌には自信のある宝田には、
そのスピーカーから聞こえてくる音痴?な歌が気に入りません。
 
聞くほどに、腹が立つご様子。
 
そうなると、その怒りの矛先は僕に向きます。
 
「おい!もんや あの歌止めさせてこい!」
 
「この靴下は 気に入らない 他のもってこい!」
 
「おまえは どうしてそんなにトロイんだ!…ボケ! カス!」
 

大御所は、PARCO劇場に車でやってきます。
自分で運転してやってきます。
 
大御所は、入りの時間もギリギリのため、
駐車場に入れていたら、間に合わないタイミングもしばしばで、
 
そういう時は…僕が公園通りの真ん中あたりで 
待ちうけ…彼が車を止め、降りるや否や、
運転を替わり駐車場に入れる役です。

たとえ、公園通りが、どんなに混んでいても 
大御所は気にしません。

スモークを張った巨大なキャデラックを堂々と道の真ん中に停め…
さっさと降りてしまいます。
 
真夏の公園通りで 時間を気にしながら、汗だくの30分 
…いつくるかいつくるかと 丸いの交差点を凝視し続け、
「きたあ…!!」 見つけるや 僕は走ります。 
前が詰まった瞬間に 大御所は 車を止めて降りてしまので、
とにかく 見つけて走るのです。
 
予め 丸いの交差点付近に いれば?… 
いやいや 彼はとにかく、なるべくPARCO劇場近くで降りたいので、
前が空いていれば…どんどん公園通りをあがっていってしまうのです。
たとえ、交差点付近で 僕を発見しても…お構いなし…

「おまえはこんなとこで何をしているにだ!!」と
怒鳴れらるだけなのです。
 
つまり、僕が交差点で待ち受けていても、
結局は追いかけて坂を登らねばならず、そうであるならば 
坂の上から下って駆けたほうが、まだ楽と言うわけです。
 
公演4日目に 宝田 石立 川崎とからむシーン。 
台本で言うと6Pに渡るシーンで石立さんが台詞を飛ばします。
しかも2ページ分… 

そこは芸達者な 宝田と川崎…
とっさのアドリブで事なきを得ますが…
 
その後が大変 
「それみたことか! だから舞台経験のない役者と組むのは嫌なんだ」
 と怒鳴り散らします。
 
そのシーンの少しあと、舞台の裏手 
上下を入れ替える細い通路で 
宝田と石立さんがすれ違いました。
 
暑く狭い通路 …僕は
宝田を団扇で扇ぎながら 進んでいました。
 
石立さんが「さっきは すいませんでした」と丁寧に頭をさげます。

…しかし 大御所 ちらっと一瞥をくれただけ、
ほとんど無視をしたまま 行過ぎます。
 
僕は思いました。その態度はいくらなんでも 
ひどいのではないか…と。
 
同じ舞台の仲間として、人のありようとして
…いかがなものかと。
 
しかし、付き人は虫けらです 
虫けらが大御所に 物申すなどありえません。
 
その晩、夜の公演のあと、
僕は石立さんの楽屋を訪ねました。
 
「今日は、宝田が失礼しました。」と頭をさげ、
田舎から届いた新茶を差しあげました。
 
何日か後、帰りのエレベーターで石立さんとご一緒に…
 
「おう…君は 宝田さんとこの…このまえは 
 ありがとな。 …これやるよ」
 
…とファンの方々から頂いた大きなダンボールの中から
日本酒を二本引き出し 僕に差し出します。
 
「…あっ!ありがとうございます」
 
やはり 人と人とは こういうものなんだ 
…と うれしくなりました。
 
その晩、次の仕事があったので、いただいた日本酒は 
宝田の楽屋にいったん置き、PARCO劇場を後にしました。
 

翌日は僕が 違う仕事でPARCO劇場には行かず 
その翌日…
楽屋に行って見ると 
…いただいた日本酒がありません。
 
あれ…?と思っていると 宝田が現われ 言います。
 
「…おい 昨日 ここにあった日本酒 
 …オレに差し入れだろ 昨日帰って飲んだぞ
 …なかなかうまかった」
 

世の中は不条理で満ちている 絶対に 満ちている。
 
「…ところで、誰の差し入れだ?」
 
「…はい…あっ…あれは…」
 
「なんだ…はっきりしろ!」
 
「はい 石立さんが 先日のお詫びにと…ボスにいただいたものです」
 
「… おっ! そうか。 あいつもなかなか気が効くなあ
 …ちゃんとお礼、言っておけよ…オマエが!」
 

思い返せばまだ経験も浅く仕事に不慣れなこんな若造の僕
…不条理?

…なにを言っているのだ
 
100年早い…そんなことを考える前に、動け、走れ 
…なのだなあ。
 
太陽がまぶしい 夏でありました。



いーじー らいだー

投稿日時:2009/08/01(土) 00:40




オバマ大統領が、白人の警官と黒人の教授を、
ホワイトハウスに招待?して、一緒にビールを飲んだ。
 
「 一日の仕事終わりに 男3人がビールを呑んだ…それだけだよ 」
とプレジデントは言う。 
 
事件への発言が、人種問題の論議を巻き起こす騒動になったことに対して…
ここまでやるか…とは思うが、
そのあたりの過敏さは、日本的な感覚では、図れないことであって、
確かに、異例なことではあるが、さすがアメリカンは、打つ手が早く、
分かりやすいパフォーマンスを心得ている。
 
麻生さんが そのあたりのジイサンやバアサンを、
首相官邸に招待?して、
“あのですね…後期高齢者という意味はですね…みなさんが考えている…
あぁ…”その差別的な表現ではないのです”
などと、いいながら焼酎を飲んでも、絵にならない上に、
本質的には効果がない…
 
だから、
「しない…よなあ 官房長官 …」 
とかいうだけで…結局、しない…やっぱりしない。
 
当事者が限定されている出来事なのに、
孕んでいる問題が果てしなく大きいからこその、
この対処法であった…のだろうが、
孕んでいる問題が問題だけに、
「あえて、触れない」と言う選択はあったろうに…、
などと思うのは日本人だからか。
 
あえて火中の栗を拾いに行く…
その行動力に限れば…
ボクは好きであります。
 
息子がいれば、こんなニュースを観た後に、
いっしょに映画を借りに行くだろうなあ…と思う。
 
「ドラゴンボール エボルーション 観たいなあ~」
 
「息子よ…それは間違った選択だ」
 
「どうして?」
 
「亀仙人が チョウ・ユンファだぞ! そんな映画観たいか?」
 
「チョウ・ユンファが誰だか知らないし…」
 
「そうか。あれはもう…君のイメージするドラゴンボールじゃないから」
 
「そうなの?」
 
「ヤムチャとかありえないし…ピッコロに愛がない…
   そこがなにより気に入らない…
   関めぐみちゃんが出ているのはびっくりしたし、
   田村英里子頑張れ…とは思うが…」
 
「…えっ?…父さん観たの?」
 
「…観た…わ…わるいか?…観ないでケチはつけないぞ!」
 
「…じゃあ…なんにするの?」
 
 
ここで、旧作コーナーに連れて行くのであります。
手に取るタイトルは… 「アラバマ物語」と「夜の大捜査戦」
(ひとり言)…いやいや ふたつとも人種問題はきついか…
そうだ!人種問題だけじゃないな…
 
「夜の…」を戻し、アメリカンニューシネマのコーナーに移動する。
 
「おまえいつかは アメリカに行くだろうな」
 
「えっ?…去年行ったよ。」
 
「なに? そうなのか?」
 
「うん。高校の修学旅行で…」
 
「なんだと?修学旅行!? 
   …母さん…そんなことはひと言も…まあいい。…でどこに行った?」
 
「どこって、ディズニーランドとヤンキース」
 
「なに?それでなにを感じた?」
 
「でかい 楽しい… あと、ケーキが甘かった…」
 
「それだけか?」
 
「うん」
 
(ひとり言)…いかん。いかん。これはいかん。
アメリカの本質を分かってないじゃないか。

まずは、「俺たちに明日はない」からか…いやいや
「卒業」か…うーん。

「真夜中のカーボーイ」よりは
「スケアクロウ」の方がが分かりやすいか?
 
「父さん…早くしてよ」
 
(ひとり言)…「タクシードライバー」を昼間に観るというのもなんだし、
「狼たちの午後」もなあ…
「ワイルドバンチ」も…うーん…ドンパチドンパチは、まずは避けて…
 
「それにするの?」
 
「そう。これ!イージーライダー」
 
「面白いの?」
 
「面白くはない」
 
「ええッ~面白くないの?」
 
「面白くはないが…オマエには 観ておいて欲しい映画で、
   こういうところから、アメリカの本質を感じて欲しい」
 
「…それって、この前、読め!って持ってきた 
    ジャックケルアックの『路上』って小説みたいなこと?」
 
「そうだ」
 
「あれも、ぜんぜん面白くなかったよ」
 
「…そうか。父さんも、ぜんぜん面白くなかった(笑)
   …でも、まずは ボーントゥビーワイルドだ」
 
「なにそれ?」
 
「まあ、いい。とにかく観よう…話はそれからだ」
 
 
 
…川崎の友人宅に 招かれた。
 
ひと晩ごやっかいになり、翌朝、送ってもらうことに。
 
「ハーレーダビッドソン ダイナローライダー」 のケツに乗る。
 
このカラーリングは オリオンといって 
世界に200台 日本に3台しかないらしい。
 
その希少性よりも、ハンドルの形状と ピカピカの車体…
なによりエンジン音に圧倒された。
 
排ガス規制の適合で、現行のモデルはキャブから、
インジェクション化され、運転状況に応じた
空熱比の制御で、燃費の向上と環境配慮されているらしい。
 
…でも、そこんところをいじって、…ほらこの音…

「ズドドドド!!!」(あえて形容するとこんな感じ)…

アイドリング時の音…これが最高!

…でもね…ほら 高速に回すと…
とたんに静かになるんですわ。
 
しかし、このハンドルは…なんというか …なに?
 
まるで鉄棒をつかんでいるようだ…
それでも、乗る姿のバランスで見ると、格好いい。
 
チョッパーというのは、ハンドルの形状のことじゃないんですわ。
カスタムするってことの総称。
ハーレー乗りは、自分流にカスタムすることで
楽しんでる人が多いんですよ。
 
 
初の2人乗り…とのことで、後ろのボクとしては、
少しでも運転しやすいように気を使う。
 
特に、信号の多い一般道路では、乗り難いようで、
特に停まる際のブレーキング…は少し怖い。
 
ハーレーは日本のバイクなんかと比べると、
ブレーキの効きが悪いんです。

だって、アメリカ大陸を、旅するバイク…
ちょろちょろ停まる必要もないから、
ブレーキなんて重要じゃないんです。
 
なるほど。
 
むかし、日本のバイクに乗っている時は、
横を他のバイクに抜かれると…
なにをこら!…と追いかけたもんですが、

こいつに乗ってからは…はいはい、
どうぞお先に…って気持ちになれるから不思議ですね。
 
途中、赤いフェラーリが横に並んだ。 

まことにもって対極の極み。
 
向こうのドライバーの心境になってみる。
 
「横にポルシェがきたら死んでも負けない。
   レくサス?…ちゃんちゃらだぜ!
   …おいおい。またエコカーかよ。やる気でねえなあ。
   ……おっ!? ハーレーか…おまえにゃ敵わねえ~ある意味な。」
 
 


ハーレーに乗るようになって、
他の趣味はほとんどしなくなったらしい。
 
僕自身は 乗れないと思う…乗ってはいけないし、
乗るキャラではない。
 
 
でも、こういう人生の楽しみを持っていることはうらやましい…
その姿はまことに格好よかった。
 
 
コミューンもなければ、ドラックもなく、拒絶すら感じない 
…大田区から戸塚までの30分の旅…
 
しばしのジャックニコルソン でありました。

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